Phasemation フェーズメーション

colums会長のコラム

会長のコラム 162

桜の開花、春一番と季節の変わり目です。体調を崩す時節ですが、如何お過ごしでしょうか。コラム162に宜しくお付き合い下さい。
私が、JVCのプロ用機器の仕事をしている当時の事、JVC顧問で在られたオーディオ研究家の池田圭さんのスタジオでの体験で、サブ・ウーファーの音に魅せられ、以来この音の再現に思いを馳せて来ました。しかし今に至るまで、この音を実現出来ずに来ましたが、今般、チャンネルアンプシステムへの疑問などが自分なりに見えてきて、思い通りのハードが完成し、昨年暮れにMJ誌に発表させて頂きました。これを機にサブ・ウーファーに再チャレンジすることにします。
サブ・ウーファーにチャレンジした私の過去歴ですが、80㎝のウーファーユニットを天井に設置して、池田流の低音再生にチャレンジした時の事、それらしき音が出るには出たものの、メイン帯域に違和感を覚え、無い方がすっきりすると言う現象を解決出来ずに、諦めてしまい、サブ・ウーファーによる低音再生に関わる機器を全てお蔵入りにした経過があります。この度、それらの機器を蔵出しして再チャレンジと言う事になったわけです。
私が池田圭さんの低音に参ったのは、クナッパーツブッシュの指揮によるウィーンフィル演奏によるラデツキー行進曲の大太鼓の音です。正しく、コンサートホールに響く大太鼓の音、奏者が注意深く叩くサマを見事に再現していました。
パイプオルガンの地を這う低音や余韻の短いジャズ系の「ストン!」と言う低音は、オーディオ技術的に出やすいのですが、このコンサートホールに響く風を思わせる大太鼓の低音再生は難しいです。問題のメイン帯域に違和感を憶える現象が解決されました。成功の原因は、MJ誌でお話ししたことの延長線であるフェーズリニアーの具現化なのです。成功した「音」を聞いて頂いた方々からは「素晴らしい体験だ」とお褒めを頂いていますが、池田圭さんに聞かせて頂いたレコードの再生には、まだまだの感で有ります。完成の暁にはご披露致しますが、「圭さんの低音」で有名な「低音」を聞かれた人は、業界のそれなりの方々ですから、安易に完成などと声を大にして言うのは控える事にします。

3月は、コンサートスケジュールも盛り沢山で忙しい月でありました。加えて、4月、5月も冬眠から覚めた如くに、溜まったマグマが噴き出す感じです。最近では、歳相応にセイブしながら大河が流れる如くにゆっくり進めることにしています。
2月28日に新国立劇場にてヤナーチェク/オペラ「イェヌーファ」の初日公演に行ってきました。本来コラム161にアップすべきところでしたが、月末なので、勝手に今月のコラム162に繰り延べしました。

2月28日 日曜 午後2時開演 レオシュ・ヤナーチェク/オペラ「イェヌーファ」初日公演に行ってきました。馴染みの薄いオペラですが、新国立劇場は5回の公演を企画しています。普通は3ないし4回ですから、日本のオペラファンの層も意外に厚いと言うものでしょう、頼もしい限りであります。
ヤナーチェクは、チェコ人でドイツ嫌いの民族主義者です。作曲家でありながらドイツ嫌いと言うのは、立場上、大変難しいと思うのです。だから、私が如き通り一片のファンには触れる機会が少ないし、勝手に誤解している面も有ったと思います。このオペラ「イェヌーファ」には、不協和音が殆ど有りません。(感じませんかな?) ヤナーチェクが作曲を始めたのが1894年の暮れで、完成が1903年3月と言いますから8年以上費やしています。時代的にはR・シュトラウスよりもほんの少し前ですから、不協和音をイメージしても不思議では有りませんが、私の勉強不足による不認識を反省しました。
と言うことで、このオペラ中々素晴らしいもので、流石と言う感じでありました。熱心なオペラファンにとっては貴重な観劇であったようです。ストーリーは、世間に良くある話で異母兄弟の恋愛三角関係を扱ったものです。音楽は、聴きなれたドイツ音楽とは一線を画している事が私にも理解出来ます。このオペラ2幕以降になると音楽に磨きが掛かり凄みを感じるようになります。8年以上の時を費やしその間の家族の不幸や生活の苦しみなどを体験しつつ、後半に至るにつれて作曲者の心境、手腕の上達などが効いてくるのでしょうか、この辺りの変化が読み取れる素晴らしい作品だと思いますし、公演そのものの「力」の入れようを感じました。

3月5日 土曜 午後2時開演で神奈川フィル定期演奏会に行って来ました。指揮が尾高忠明、チェロが宮田大、コンサートマスターが﨑谷直人、演奏曲がエルガー/チェロ協奏曲とウォルトン/交響曲第1番でした。チェロの宮田大は、日本国内、海外のコンクールで優勝を果たし国内外の有名オーケストラとの共演を果たし、将来を嘱望された若きチェリストであります。エルガーの曲に付いて、今更語る事も無い名曲ですが、ウォルトンの交響曲は初めて聴く曲であり、定期演奏会だからこその選曲だと感じます。ウォルトンと言えば映画音楽が有名で「この人、交響曲も書くの?」と言う疑問が湧きます。しかし、世が世なら、つまりナチス政権の樹立が無ければ、映画音楽には手を付ける事は無かったかも知れません。新ローマン主義風のオーケストラ曲、特に交響曲は外せないと言われています。聞いてみての感想は、まずもって素晴らしくて凄いです。特に、最後のエピローグで、勝利を宣言するかのような、輝かしい金管の楽想を掻き立て、ベートーベンの「苦悩から勝利へ」を想起させるものの、何故かこころから喜んでいるように聞こえない。何度も何度も同じフレーズを繰り返して勝利を叫んでいる、どことなく空虚な響きを感じてしまう辺りは、来るべき時代の恐怖の表現とも聞こえます。この終曲近くのエピローグを表現する部分の繰り返しは、オーケストラ全ての楽器の強奏で、オケの皆さんご苦労様でしたと言いたいぐらいに、凄い、聴き応えのある部分で「生演奏」で無ければ有りえない、感動ものでした。
当日は、神奈川フィルの当期最後のコンサートで、会費制ですが定期演奏会会員へのサービスとして、常任指揮者と楽団員全員が参加しての交流会が行われ、楽しいひと時を過ごしました。

3月6日 日曜 午後2時開演のマチネに新国立劇場にてR・シュトラウス/オペラ「サロメ」の初日公演に行ってきました。参考までに、「サロメ」の公演はこの日が初日で、この後に3公演があり、最後の公演が3/15です。「イェヌーファ」の最後の公演が3/11で、この間新国立劇場の出し物は、2演目が交錯します。初日だけでも満席ですから、日本のオペラファンの層も決して浅くは有りません、頼もしい限りです。兎に角、世界一流の歌手に一流の指揮者、加えて日本一流のフル・オーケストラです。高齢者割引の制度などが有って、税金の補助が有って、本当に安いと思います。
オペラ「サロメ」、初演が1905年12月で「イェヌーファ」よりも新しいとはいえ殆ど同時代と言えましょう。だから我々素人は錯覚するのです。オペラ「サロメ」の斬新性は、ずば抜けたものだったようで、ウイーンでは上演禁止の騒動があったほどです。不協和音の後に来る見事なメロディーに聴衆はたまらない魅力を感じ、私などは、それこそ「這ってしまう、泳いでしまう」と言う表現の仕方しか思い及ばない状況に至るのです。
指揮がお馴染みのダン・エッティンガー、演奏が東京交響楽団、東フィルでないところが面白い。(エッティンガーは東フィルの常任指揮者) サロメ役がカミッラ・ニールント。R・シュトラウス、ワグナーなどのドイツ物を得意とするベテラン、新国立劇場には「薔薇の騎士」で出演歴があります。この人、バレエの素養がある見事なソプラノ歌手でした。余計な事ですが、オペラ「サロメ」は国立劇場で何度か観劇しています。しかし、「イェヌーファ」は初めて、もし「イェヌーファ」が何度も公演目録に揚げられたとしても、私は行くのに躊躇するでしょう。オペラは、大衆芸術であって、面白い、楽しい、だからカネを払って行くのであって、気取った上品な趣味だ、等との偏見は無用に願いたいものです。

3月12日 土曜 午後2時開演のマチネ公演 聖トーマス教会合唱団とゲヴァントハウス管弦楽団による J.S.バッハ/マタイ受難曲 BWV244 公演にミューザ川崎に行ってきました。
当日の指揮がゴットホルト・シュヴァルツ、トーマス教会カントールで、世が世で有ればJ.Sバッハだったのです。このマタイ受難曲は、大変長い曲でレコード聴くにも全曲通して聴くのは難しい状況に至ります。しかし、この曲は凄く良い曲でバッハのカンタータの神髄といえるものですから、聴かないと損と私は言い切ります。全曲66曲あって、コンサートでは29曲迄が前ステージ、30曲から66曲が後ステージで、その間20分の休憩があります。トーマス教会での演奏は、合唱団が教会上部の左右に分かれて演奏しますが、ここでは、ステージ上にて一応分かれるように配置されています。名曲の誉れ高いこの曲は、全篇が一連のキリスト受難のストーリーから成るので、どの部分が素晴らしいかと言うことは一概に言えません。一度通して聴くことにより、自分の感性に合った音楽を聴くということも可能と思いますが、私の感性からすると、39曲からが凄いし、レコードを聴くときはここ当たりから聞くときが多いです。しかし一度ないし2度は、字幕付きの全曲を通して聞いて貰いたいと思います。やはり音楽は連続性が基本でありますから、良いとこ取りは勧めたくありません。
当日のミユーザ川崎ホールの私の席ですが、1Fの平土間席でした。このホールの平土間席は、構造上席数が少なく、私も初めてでした。流石にこの席は良いです。神奈川フィルの演奏会でも度々利用しましたが、あまり良い印象は無かったものの、素晴らしかったです。
只、ホワイエは2Fにあり、平土間席からは行きにくいし、トイレが少ないのが難点であります。JR川崎駅に接続された便利なロケーションである、その反面無理な構造なのかも知れません。

3月19日 午後12時開宴で昼食会に続き、恒例のオペラ公演が催される高輪オペラの会に、高輪プリンスホテル内のレストラン「イル・レオーネ」に行ってきました。
演目は、オペラファンの定番である、モーツアルト/オペラ「ドン・ジョヴァンニ」でした。
このオペの筋書は、単純ですが、人的関係が複雑で登場人物も多いので、この様なコンサート形式で演奏するには難しい台本が求められ、ご苦労された跡が伺えます。テノールの谷さんが2役を演じるなど苦労の後が思われます。
ドン・ジョヴァンニ役に宮本益光、レポレッロ役に谷茂樹、ピアノ伴奏がお馴染み藤原藍子で、藤原さんのピアノがいつもながらの素晴らしい演奏だったこと、レポレッロ役の谷茂樹の教え子に当たる宮本益光の役柄コンビが冴えていました。谷茂樹は音楽大学の教授を務めるバリトン歌手です。この辺りの気遣いなどもあるのでしょう。そして、誰とは言いませんが、将来が楽しみな人、以前より相当に上達しプロとしての努力を惜しまない人などを交えた好感の持てる公演でした。
余計な事ですが、料理が以前に増して美味しくなった事、改めてディナーに訪れようかと思う程であったのも収穫でした。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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