Phasemation フェーズメーション

colums会長のコラム

会長のコラム 064

・音楽シーズンの始まり

8月末から9月にかけて、長野県松本市でサイトウキネンフェスティバルが開催されました。毎年、この時期に開催されるこのフェスティバルは、秋の音楽シーズンの幕開けを知らせる予鈴のようなものを感じます。10月に来日するウイーン国立オペラ劇場の引越し公演、新国立劇場の新年度プログラムのスタートが10月、そして神奈川フィルの夏休み明けが同じく10月と言うことで、10月からは非常に忙しくなります。
さて、今年のサイトウキネンフェスティバルですが、小澤征爾の体調の不調が伝わって出演しないのではないかとの噂が流れましたが、初日9月6日は何事も無かったかの如くに極めて快調に指揮する姿がNHK BSライブ放送にて見ることが出来ました。私の今年度の鑑賞演目ですが、小澤征爾指揮に拘ってオーケストラコンサートのBプログラムを選びました、演奏曲目がモーツアルトの交響曲32番、武満徹の「ヴィジョンズ」、そしてマーラーの交響曲1番「巨人」でした。
私の場合、現代物はどうも好き嫌いが激しく、今年のオペラ演目のヤナーチェクには食指が進まずパスしました。公演選びに第一に考えたのが、サイトウキネンオーケストラ演奏、小澤征爾指揮によるマーラーに魅かれたわけです。このコンサートBプロの会場は、松本文化会館ですが、ここは「松本しみん芸術館」がオープンしオペラ公演をこちらに写して以来こちらがコンサートホールを担っています。

松本文化会館正面

以前にもお話しましたが、オペラ劇場での舞台上でのオーケストラコンサートは「音」が悪くなる傾向が一般的にあるのですが、ここのホールはその様な現象を全く感じません。 このオーケストラコンサートBプログラムは、9月8日が初日の公演でその様子がNHK BSライブにて放送されました。私は、そのハイビジョンによる生々しい番組で予習をした後に「生」を聞くと言う贅沢が出来たわけです。ハイビジョン放送を自慢のオーディオ装置で聞いて、そのホットな感激を持って翌々日に同じものを「生」で聴いたわけです。その結果は、言うまでも無く「生」は素晴らしいと言うことです、オーディオ装置に「生」らしさを求めて止まない私のオーディオライフですが、ここでの衝撃は大きなものでありました。 自宅のシステムが如何に自慢であっても、ハイビジョン映像が伴っていようも、同じような会場の雰囲気など求めようもありません。その受ける感激が何故これほどまでに違うのか、マーラーの交響曲第1番はなかでも理解し易い曲です。オーディオ装置の「らしさ」の追求とは言うものの、その次元の違う感激に付いて考えてみました。それは、ライブとは言え放送で見聞きしている間は自分流にいい加減にしか聴いていなかった事が、次元の違いに関係する一部の理由であると思った次第で、コンサート会場では緊張してディテールに至るまで聴いている事が、音楽理解に影響し感激の度合いを増長していると感じました、これは、音楽の聴き方として多いに活用したい反省材料でありました。

コンサート会場(開演前の舞台)

今月は、これと同じような事を神奈川フィルのコンサートでも経験しました。それは、「クラシック名曲紀行」と称する、定期公演とは別の神奈川フィルの自主公演コンサートでの体験でした。演奏曲目がラフマニノフの交響曲2番で、この曲はメロディーが美しく馴染みやすい曲で、映画音楽やポピュラー曲に利用されています。私は、交響曲として通しで生演奏を聴くのは、縁が無かったと言うか敬遠していたと言うか、いずれにしても初めての経験でした。演奏が神奈川フィル、指揮が現田茂夫と言う定期演奏会の定番構成で聞いたわけです。変な言い方ですが素人の勝手な発言としてお許し頂くとして、原曲を本格的な演奏で聴くと中々素晴らしい曲である事を認識し早速名演と言われるCDを探しにかかっています、クラシック音楽は「生」を聴かないと真実が解らないところが有ると最近痛切に感じ取っています。

話は変わりますが、先日オーディオ評論家でもあり、録音技術者でもあられる方が、当社試聴室にお越しになりました。氏が、最近製作されたCDをここで聞かせて頂きましたが素晴らしい出来栄えで私やスタッフ達も恍惚とした思いで聴いていました、氏が言われるには当社の試聴室は録音スタジオと同レベルの分解能を持っているにも関らず、音に温かみがあると言って褒めてくださり、演奏者を此処にお呼びして聴いて貰いたいと言っておられました。
お世辞もあると思いますが、我々機器開発を進めるに当たり分解能の良い部屋と機器は欠かせないツールであります。そのシステムに「潤い」があれば、言う事無いと思っていますが、この「潤い」に付いては、私とスタッフ達とは夫々に違った意見を持っており、これが求める「らしさ」の違いに繋がるものと思います。言うまでも無いことですが、この「らしさ」の違いは「音」の良し悪しの違いとは別ものであります、そして分解能の良し悪しは「音」の良し悪しに繋がるものであります。
当社の商品をお買い上げ頂いたお客様やこれから購入をご検討されている方々にも聞いて頂きたいと思っていますので、ご希望があればその旨お近くの販売店にお申し出頂き、予約を取ってご来社頂ければ幸甚で御座います。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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