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colums会長のコラム

会長のコラム 165

忙しかった5月を過ぎて、やや落ち着きを取り戻したものの、定期健康診断で大腸直視を指摘され、大腸直視なるものを生れて初めての経験で緊張しましたが、結果はポリープ3個見つかって要手術を言い渡されました。7月の中旬に2泊3日の手術と決まり6月の気候と同様に憂鬱であります。
今月のコンサートスケジュールは、神奈川フィルの定期演奏会と小笠原伸子の音楽堂コンサートの二つだけでした。7月は一転してコンサートラッシュとなる予定です。最近では、コンサートもラッシュとなると、些か苦痛を感じる昨今であります。

6月4日 神奈川フィル定期演奏会が神奈川県立音楽堂にて午後3時開演で行ってきました。指揮がキンボー・イシイ、演奏曲目がスティーブン・パウルス/スペクトラと、ラヴェル/クープランの墓、の2曲が前ステージで演奏され、後ステージがハイドン/交響曲102番でした。
キンボー・イシイは、ヨーロッパを中心に活躍している人で、日本やアメリカでも活動しており、日本のN響始め大所とはお馴染みの人です。国籍が何処か解りませんが、12歳まで日本に居てヨーロッパで教育を受けたとプログラムに書いてありました。
前ステージの演奏曲目は、定期演奏会で無ければ聞く機会の無い滅多に演奏されない曲でしょう。スティーブン・パウルスは、2014年10月に65歳で亡くなり、この曲は1980年12月に完成されたとあります。現代音楽そのもので、解説文を読んでも理解は出来ません。しかし、生音楽の威力でしょうか、勉強してみたくなる何かを感じさせるものが有り、余生の楽しみが増えそうです。
ラヴェル/クープランの墓は、ラヴェルのクープランを思う心であり、フランス音楽へのオマージュでもあると解説されています。またラヴェル自身第一次世界大戦に参戦しており、戦死した友人たちへの思いに捧げたものとも言われています。ともあれ、ラヴェルの曲であり、良い曲なのに、初めて聴くのが不思議に思う曲で、定期演奏会ならではの選曲に感謝であります。

6月10日午後6:30開演で、神奈川県立音楽堂にて「小笠原伸子コンチェルトシリーズ」と言うコンサートに行ってきました。小笠原伸子は、前にもこのコラムで紹介しましたが、東京芸術大学卒後イタリアでアッカルドに師事しバロックバイオリン奏法を学び、1987年迄神奈川フィルのコンサートマスターを務め、その後横浜を中心にバロック室内合奏団を主幹し活動している人で、好感の持てる実力派とみています。しかし、当日のベートーヴェン、メンデルスゾーン、チャイコフスキーのV協3本立ては、如何なものか。これらの曲は、ポピュラーとは言え決して軽いものではなく、指揮者や演奏者が変わるたびに、スリリングな感動を覚える名曲揃いです。その名曲をこれでもかと思しき聞かせ処を押し付けられると些か緊張感が持続しないもので、コンサートで味わうスリリングな緊張感を感じることは出来ませんでした。これらの歴史的名曲3本立ての安売りは、感心しません。集客熱心のあまり、芸術への冒涜の気がし、作曲家への慎みの無さを感じてなりません。

最後に、オーディオの話で〆る事にします。最近のスピーカーシステムに革新が起こっていると感じます。それは、振動板やボックスに新素材や革新的な加工技術が利用され、オーディオ装置の音が進化していると感じるからです。今までに成しえなかった「音」が再生されているのか、我々の未体験の音が出ているからなのか、しからば「良い音」として生に近いものに成長したのかと問うならば、否といわざるを得ないのですが。。
オーディオ技術の初期は、増幅器を使わない蓄音機のラッパ(ホーン)から始まり、増幅器(アンプ)を使う技術へと進化すると、レシーバーと称するドライバーをホーンに付けて音を出すように進化し、映画のトーキーとして発達しました。我々の家庭用オーディオ装置も同じ経過を歩んでいます。やがて、ダイナミックスピーカーが発明され、ホーン型スピーカーは中高域再生に関して生き残り、低域はダイナミックスピーカーに置き換わって行く事になります。そして中高域用スピーカーはホーンに繋がれたコンプレッションドライバーと言う形になって発展して行きます。現代のJBLやタンノイなどでは、その良さを利用した商品作りが今も続けられています。
しかし、最近の商品は、全帯域にコーン型が使用されるタイプが圧倒的に多くなっています。さて問題は、コーン型とコンプレッション型とどちらが優れているのか。それは、それぞれに特質があって一概に言えないが、コンプレッションドライバーに慣れ親しんだオールドファンは迷わずコンプレッションと言うでしょう。私などは、女性ボーカルはコンプレッション型に限ると思っています。だから、最近の高額スピーカーには馴染めない不幸者であり、ネットワークを駆使するスピーカーシステムには馴染めないのであります。
「良い音」「悪い音」の基準は必ず存在するし、それも音楽のジャンルによる差に関係なく存在するものです。その基準を定義付ける数値は有りません。だからこの問題も「馴染める」「馴染めない」と言う極めてファジーな表現になってしまいますが、我々プロの間では色々言わなくともそのけじめは解るのです。言葉の通じない外国人との間でも通じ合える共通マインドで、分からない人は自ずとデバイドされる世界であります。この事を前提にお話していますが、オーディオも資本主義社会に存在する商品です。製作に困難なコンプレッションドライバーは嫌われつつあります。スピーカーを例に挙げましたが他のデバイスについても同様とご理解頂くのが正解でありましょう。
「我が道を行く」も結構ですが、潮の変わり目に裏ありです、目聴きならぬ耳聴きを理解した上で経験を積んで頂くこと。それには、数多くの商品を聞きまくる事が必須であります。
ここでは、スピーカーに例を取りましたが、各社のショールームを訪れたり、いろいろなイベントに参加して感性を磨くことが肝要であり、自分にとっての高額不適格品の見分けは、自分にしか出来ないのです。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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