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会長のコラム 156

この秋に来日した英国ロイヤル・オペラ 日本公演のレポートです。この公演は、日本舞台芸術振興会の主催によるもので、3年間の公演が企画され、今年の英国ロイヤル・オペラは、その2年目に該当します。来年は、ウイーン・フォルクスオーパーが予定されており、私の場合、この3年間に渡りチケットを購入しています。それは、良い席の確保が目的ですが、3年先の予定となると色々問題が出てきます。神奈川フィルの定期演奏会、新国立劇場の定期公演などは1年ごとの一括購入なので、何かの演目にバッティングが生じるのは仕方ないし、海外旅行などもその近辺と思われる時期は、予定のバッティングを何時も気にしなければなりません。
と言うことで、2本のオペラ公演は無事終了しましたが、神奈川フィル定期演奏会の1演目が犠牲になりました。

NBS(日本舞台芸術振興会)の今年の公演、英国ロイヤル・オペラ日本公演は、ヴェルディ/オペラ「マクベス」、モーツアルト/オペラ「ドン・ジョヴァンニ」の2演目です。
最初に、9月15日火曜午後3:00開演で、上野の東京文化会館での観劇でした。このオペラは、ヴェルディの比較的初期の作品で、才能溢れる作曲家の将来を暗示するものを感じさせ、そして我々の知るヴェルディ節を強く感じるものであります。シェイクスピアの原作からのオペラ化で、シェイクスピアの作品中でも人気の高い作品で、ヨーロッパでは(世界中かも知れません)上位の人気作品であります。ヴェルディは、シェイクスピアの作品を愛し、英語作品としての理解も正しかったと言われています。しかし、後の作品であるヴェルディ/オペラ「オテロ」などに比べると、作品力と言うか、オペラストーリーの表現が今一魅力にかけます。その為か、初演当初からヴェルディにはシェイクスピアへの理解が無いと言う批評も有ったようですが、この辺りの事情は色々な解説書にて語られているので省略させて貰います。
当日のキャストは、流石と言うものであります。オペラ座の伝統の成せる技でしょうか、現在集め得る最高の歌手陣です。歌手の出身地は国際色豊かで、適材適所と言うか、徹底して役どころに歌手を当てていると言うことです。特に、マクベス夫人のリュドミラ・モナスティルスカは、キエフ出身でチャイコフスキー音楽院出身、少し太めなところなどマクベスを圧倒する様は、役どころとして流石であり、そのスピントソプラノの出来は久しぶりに聴いた出来栄えでした。そして、マクベス役ですが、今人気のバリトン歌手です。夫人に圧倒される役ですが、戦場で鍛えた体格を思わせるその体型は適任、加えて、素晴らしい歌手です。その他の歌手も粒揃いであり、新国立劇場との差は「カネ」の掛り具合かそれとも伝統の力か。結果として比較になりません。指揮は、お馴染みアントニオ・パッパーノ、今ではロイヤル・オペラの顔でありヌシとも言えましょう。オーケストラは、ロイヤル・オペラハウス管弦楽団です。
当日は、火曜日なので東京文化会館前の駐車場はパーキングに問題無く、終演後もスムースに楽々保土ヶ谷の自宅に帰る事が出来、帰路のストレスを感じる事無く余韻を永く維持出来ました。お蔭で、暫くは持病の「発作性心房細動」の症状も出ていません。

次に、モーツアルト/オペラ「ドン・ジョヴァンニ」です。9月20日日曜午後1:30開演で行ってきました。お馴染みのオペラであり、何度見ても飽きる事は有りません。作曲当時はオペラ・ブッファとして通っていた様で、モーツアルト自身もその様に記していたようです。しかし、フランスなどでは高く評価されグランド・オペラとして扱われていたと聴きます。現代の我々からすると、素晴らしい音楽にも関わらず子どもには観せたく無い、と言う感覚が有ったり、その良き時代を羨ましく思ったりもします。素晴らしいモーツアルト節、どの様に料理して出て来るのか、今求められる最高の歌手陣と演出が楽しみでありました。
出演者に付いて言えば、何と言ってもドン・ジョヴァンニを演じるバス・バリトンのイタリア出身イルデブランド・ダルカンジェロ、そして、ドンナ・エルビーラを演じるメゾ・ソプラノのジョイス・ディドナート、など今旬の旬と言える人気の歌手の出演であります。このオペラには、重要な役所であるドン・ジョヴァンニの付き人レポレロ、父親を殺された娘のドンナ・アンナ、ドン・ジョヴァンニの餌食になりかけたツェルリーナ、等の重要な役所の歌手が必要で、全てに優劣つけ難い歌手をあてているのが大きな魅力です。
斬新な演出である反面、衣装はビクトリア調で雰囲気を醸しだす好感のもてるもの、回転する建物の方向転換で瞬時に変わる場面の表現など解りやすいものでした。その反面、ドン・ジョヴァンニの悪態振りがリアルに表現されつつも、滑稽であり、良き時代の男社会の羨ましさを感じつつ、音楽の素晴らしさ、楽しさを満喫させてもらいました。
この日は、日曜日でNHKホールでのマチネ公演でした。駐車に苦労するであろうと思い、敢えて電車で行きました。渋谷ハチ公前の混雑は異常です。たぶんいつものことなのでしょう。NHKホールに向かう、なだらかな昇り坂道もホールに近づくに従って人ごみが疎らになり、途中で若者は目的の処に散らばって行く様がわかります。「お前たち、こんな所でうろうろせずに、帰って勉強したらどうだ」と大声を張り上げたくなる心境は、老境の仕業でしょうか。これからオペラの鑑賞と言う気分とは裏腹に、刺とげした心境は頂けません。今後NHKホールでのコンサートはマチネで有ろうと、宿泊する事にしました。
音の悪いNHKホールですが、平土間の真ん中では多少乾いた音が気になりますが、その瑕疵は大した事は有りません。しかし、その様なエリアは極僅かで、席の確保は難しいでしょう。公演者側は、観客の数が稼げるのでしょうが、なにせ、紅白歌合戦の会場で、オペラハウスでは有りません。文句は言うまいという事であります。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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