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colums会長のコラム

会長のコラム 066

・ドイツのオーディオ市場
・ウイーン国立劇場

話が前後しますが、10月のドイツ出張レポートを先に書く事にします。
ドイツ、ハンブルグは以前当社社員が駐在していたこともあって、私にとってのゆかりの地であります。
今回のドイツ訪問の目的の一つに、当地に於けるハイエンドオーディオの市場調査がありました。と言うのもドイツの音楽環境の素晴らしさと、伝統的な機械技術の文化を持つ社会での、趣味のオーディオにも影響しているのではないかと思っていたからです。
目抜き通りの立派な店のウインドウにはアナログプレーヤーが多機種派手に展示してあります。見るからにハイエンドオーディオショップを装おう店の中に入ってみますと、なんと、この店の営業重点はホームシアターであり、店頭のアナログプレーヤーは売り物ではなく客寄せパンダである事が判明し、機械好きのドイツ人らしい客寄せ手方に納得なのですが、アナログ機器メーカーを主管する私としては穏やかでは有りません。
同じ様な、ある店では私の顔を見るなり、お前の写真があるから漢字でサインしてくれと言います。なんと、オーディオ雑誌に当社商品の「P-3G」がレポートされた記事でその中に私の写真が載っているではないですか。そう言えば暫く前に取材に応じた記憶が蘇りました。あまりの記事の大きさにこちらがビックリしながら、この記事の「P-3G」今持っているから聴いてみてくれと言うと、アナログ環境は無いから駄目だと言う。一体これは何だと思った次第ですが。
やっと原因を突き止めました。要するに、目抜き通りに店を構えていると経費がかかり、アナログオーディオの様に手間のかかるもものをチマチマと商売するわけには行かないと言うのが本音でした。商人の考える事は何処の国でも同じで驚きを禁じ得ません。アナログオーディオは何処で扱っているのか聞いてみると、その売り子も本心はアナログオーディオの信望者で、店の場所を熱心に教えてくれ、その上電話まで入れてくれる熱の入れようです。このドイツ人魂には再度ビックリでした。
さて、そのアナログオーディオのお店ですが、路地を入った中庭の様なところに店がありました。電話で紹介を受けていた事もあって、店の中には先客が居ましたが、その先客も私の訪問を歓迎してくれ、アナログオーディオの仲間として向かえ入れてくれる雰囲気に感激した次第です。店の店主と客は馴染み同士のような感覚でレコードの話でもちきり、レコード音楽に慕っている感じです。ドイツでは、この様にしてオーディオ機器が売買されるのが一般的なハイエンドオーディオショップの在りかたのようです。確かに手間がかかりますが、オーディオ機器の性格からこう言う環境に納得してしまいます。目抜き通りの立派な店では、売る側にも買う側にも得るものは無いような気がします。
ここで、何が売れているか、それは私の得た貴重な体験ですから企業秘密と言うことで。

10月下旬は、ウイーン国立劇場引越し公演の観劇です。この度の公演には3演目ありまして、モーツアルトのオペラ「コシファントッテ」、ベートーベンの「フィデリオ」そして、ドニゼッティーのオペラ「ロベルト・デヴェーリュー」です。このうち、「コシファントット」と「フィデリオ」が10月で、「ロベルト・デヴェーリュ」は11月初旬の公演となります。10月下旬はこのオペラ2演目のゲネプロへの招待も受け、それに新国立劇場のオペラ「リゴレット」と続きます。
ゲネプロと言うのは本番と同じ舞台と衣装、オーケストラ全て本番同様に行いますが、場合によっては、歌手が少し手加減して声を小さくしたり、半音下げて歌ったりしますが、今回はほとんど本番同様に進行していました。客席は、大半公演関係者で占められますが、招待者は真ん中部分だけに割り当てられ、残りの席は殆ど空席の状態で舞台は進んで行きます。
モーツアルトの「コシファントッテ」は、東京文化会館での公演で素晴らしい舞台と演奏でした。何と言ってもオーケストラがウイーンフィルです、正確には国立劇場管弦楽団と言うのかな、コンサートマスターがライナー・キュッヘルさんでした。やっぱり、ウイーンフィルの方がシックリしますね。そして指揮がリッカルド・ムーティーと役者揃いです。海外でもなかなか出会えない組み合わせの上、時差ボケや旅行疲れも無い絶好の体調での観劇ですから、受けた感激はいつまでも余韻の残るものでした。
終演後の出口付近で、音楽評論家の加藤浩子先生にばったりお会いし、先生も多くをかたらずで、一言「やるもんですねー」と余韻にひたすら浸っていたい様子でした。
続いて、ベートーベンのオペラ「フィデリオ」です。この公演は、全て横浜の神奈川県民ホールでの開催です。演奏がウイーンフィル、指揮が小澤征爾と言うこれまた役者揃い。文化会館とは違った音の響きを感じつつオペラは進行します。第2幕1場の後に演奏される「序曲レオノーレ3番」は指揮者が気を入れる事で有名です。小澤の演奏を期待しつつ私も緊張します。これこそ、何か特別な思いが感じられ何時までも印象に残るものでおりました。このオペラは何度と無く観ていますが、今回の演出は大変好感のもてるもので、一番わかり易く、しかもその時代を表現したものだったと思います。
10月最後の公演は、新国立劇場のヴェルディーのオペラ「リゴレット」です。
演奏が東京フィルハーモニー、指揮がダニエレ・カツレガーリ、この人は新国立劇場2度目の出演でイタリア出身です。今でも、有名劇場に出演しておりキャリアの豊富な指揮者ですが、当日の演奏は東京フィルの出来が良かった分、指揮者の間の取り方に何か違和感を感じてなりませんでした。
リゴレット役のバリトン ラード・アタネッリですがメトロポリタンやミラノスカラに出演している実力歌手のようです。しかし、どうも役柄に合ってない感じは免れません。このオペラは、過去にストーリーの凄さ故に公演を拒否された経緯もあるくらいドスの利いたと言うか、グロテスクと言うか、言葉に窮しますが、凄いオペラなのです。それが肝を抜かれたかのような感じになってしまい、どうもこのリゴレット役はミスキャストだったと言えるでしょう。
日本人にも、もっと良い適役者がいるのに、と言う声も聴かれました。確かに、税金を使っているのですから、人材は日本人優先に考えて当たり前と思いますが、オペラは白人の文化でもありますから、主役は白人優先と言うのも納得しますし、この辺りの意見は素人の私には良くわかりません。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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