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colums会長のコラム

会長のコラム 133

11月のコラムです。
今秋の異常季節は、11月になってやっと秋らしい季節を感じる様になりました皆様如何お過ごしでしょうか。
今月は、今年の新商品の統括月であります。当社の目玉は、メインアンプのMA-1000です。当初の計画は、プリアンプを予定していましたが商品企画が途中でぶれてしまい、今年中の発売は不可能と判明し、急遽メインアンプMA-1000の企画に切り替えて、どうにか、今年末までに発売に漕ぎ着ける事が出来ました。
結果として、オーディオ各誌の賞にノミネートの資格を得て、我々が重要視するステレオサウンド誌のグランプリに選ばれたことは、関係者一同喜びとするところであります。
このアンプに使用する出力管は、スロバキアのJJ社と言う真空管メーカーの商品で、2A3-40と言いますが、2A3と言ってもプレート損失が40Wもあり、300Bと同じ大型管であります。
本来の2A3とは似つかない規格球でありますが、その性格は2A3のDNAを持つもので、ヒーター電圧が2.5Vと言う何とも掛け変えの無い素晴らしい性格の持ち主であります。
ヒーター電圧2.5Vと言うのは、アンプ設計者にとって涙が出る程嬉しい性格なのです。つまり、交流電圧でそのままヒーター点灯することが出来ることで、300Bの様に直流点火の必要が無く「音」が死なずに生き生きとする事です。
この特質は、遠からず他社も真似してアンプの商品化に向けてくるでしょうが、今般ステレオサウンド社のグランプリ賞を獲得したこの商品の特色、性能、音創りは、その他多くのノーハウを含むもので、二番煎じの商品には出せる音ではないと自負しています。
このアンプを計画するに当たり、市場からの要求が多いプッシュプル方式も考えましたが、市場の要求と言うのはパワーが大きい程売りやすいと言うもので、音質を重視する我々としては納得出来ないものでありました。
パワーアンプの商品価値が、「商品価格対ワット数」と言う商売優先の発想は受け入れられません。音質優先にして必要最大の選択となるとシングル回路になります。
このアンプは10W/8Ωとなり、300Bシングルアンプと同等もしくは、それ以上の実力を有します。そして、300Bとは違った、2A3のDNAを持った今までに無い優れた性格のアンプに仕上がっています。

次に、前号の続きとなるチャンネルアンプシステムです。
前回お示しした様に、ミッドレンジの WE-22A+WE-555 は、Low(アルテック416) 、Hi(ゴトー・ベリリューム) チャンネルに対し1.7mの時間遅れが出る問題を指摘しました。
この解決には物理的にユニットの設置の位置を変えるか、デジタルディレーを用いるか、今のところこれ以外の対策方は無さそうです。
私は、過去に数社のデジタル音場調整器なるものを購入し導入しましたが、デジタル臭を拭いきれず、何れもお蔵になっていて、この手の物に悪い先入観がありました。今般、色々なかたからDEQX社のものをご推薦頂き、そのスペックを調べてみるとデジタルの欠点を充分に理解した設計がなされており、この音場調整器を購入してみる気になりました。
使用してみると、何と、過去の私の先入観を打ち消す素晴らしい音質であることが判明しました。入力端子にはS/PDIFとアナログ端子を備え、アナログの入力レベルをプロセッサーの最良レベルに固定する方式は嬉しい限りです。
そして、内部に備えるADC・DACのグレードは一見して、優れものである事が理解できました。しかし、本器の弱みは、チャンネル・デバイダーの出力6チャンネルを同時にレベル調整する総合VRが、デジタル式であることです。
ここは、デジタル式以外に常識的に選択肢は無いでしょう。そこで、早速当社のハイブリッドATTをL,R 分けて、3連×2CHにして挿入したところ、これが図星でして、実に素晴らしい音として再現するではないですか。300dB/octのロールをフェーズリニアーで実現することなどアナログ技術では不可能です。
そして出てくる音は、私が過去に経験した事の無い音質を体験しました。音質、音場定位共にパーフェクトです。前号でご紹介したミッドレンジをショートホーンに代えたときとの音と全く遜色なく、しかも、WE-22A+555のホーンの良さを充分に発揮しています。どうやら、私のチャンネルアンプシステムもこれにて終了となりそうですが、これで終了では技術者魂が黙っていません。
私の提案するアナログ式が、ディレー回路だけに問題があるなら、DSDデジタル回路でディレー回路を作っては如何かと言う次へのチャレンジテーマが浮上するのです。これへのチャレンジは、暫く時間を頂き、このシステムで音楽を聴く楽しみの時間が欲しいです。

次に、今月の音楽ライフです。例によって、高輪オペラの会、神奈川フィル定期演奏会、新国立劇場オペラ「ホフマン物語」となります。その他、今月の特別物として、我々のアイドル鷲見恵理子さんの横浜ゾリステンとの共演となるチャイコフスキーのV協演奏会がありました。

1.横浜ゾリステンとの共演による鷲見恵理子バイオリンコンサート
神奈川音楽堂にて11月2日(土)18:00時開演で行ってきました。
鷲見恵理子さんは、鷲見三郎のお孫さんでバイオリニストです。ニューヨークのジュリアードを卒業後、イタリアで演奏活動を続けていた人です。
そして、横浜ゾリステンは、横浜を中心としたプロの音楽家達の集まりで、指揮者を置かないオーケストラ演奏を目指す人達の集まりです。
この方々とは、当社の広報業務を請け負うオフィス・アミーチを主幹する西松さんが、毎回このコンサートの録音を担当している関係で、私も鑑賞させてもらっています。
当日の演奏曲目が、鷲見さんの独奏でチャイコフスキーのV協、おなじくチャイコフスキーの白鳥の湖抜粋の組曲風にアレンジされた曲、と充実した内容の曲が演奏され、音楽堂の素晴らしい音響と相俟って、素晴らしくスリリングな演奏に緊張した時間を費やしました。

2.高輪オペラの会 ヴェルディー/オペラ「トゥーランドット」
11月9日(土)12:00時開演、品川グランドプリンスホテル新高輪に行ってきました。当日の出演は、トゥーランドット姫:福田玲子、王子カラフ:加藤康之、リュー:辛島小恵、ティムール:谷茂樹、ピアノ伴奏:藤原藍子でした。
リューを演じた辛島は、桐朋音大卒で谷の教え子とのことですが、今はミュージカルにて活躍中とのことで、当日もそのファンらしき人たちが大勢観客としてきていました。大学ではソプラノを勉強されたそうですが、オペラのベルカント歌唱とは基本的な違いがあり、終始違和感を感じざるを得ないリューでした。
福田は、流石ベテランだけあって、次元の違いを感じさせられ辛島の選択に疑問でありました。加藤康之は、未だ若く修行が足りない上に、声を張り上げるので些か聞き手として参りましたが、声量が豊富だから、もう少し余裕を持って歌い上げれば良いのにと思いました。
私は、普段から海外の一流歌手を聞いているので、不満が残るのですが、やはり未完成の歌手を聞くことにより、歌唱の価値を一層高められる事に価値を感じる機会を得ました。
そして、谷さんですが、バリトンの歌手であり桐朋音大の教授であります。このようなハイアマチュアを聞き手とする舞台に出演し、日本のオペラの普及と後輩の指導と、道筋に貢献する事も音大先生の任務と言う事になるのでしょう。

3.神奈川フィル定期演奏会
11月22日(金)19:00時開演で行ってきました。演奏曲目は、ブラームス/交響曲3番、ラフマニノフ/ピアノ協奏曲3番でした。
ピアノ独奏が、清水和音でこの人はロン・ティボー国際コンクールにて弱冠20歳で優勝し、世界的に活躍する人です。特に、本人が愛してやまないラフマニノフのピアノ協奏曲は、発売されたCDからもその逸品ぶりが伺えます。そして、現在は東京音楽大学教授を勤めています。
ラフマニノフのP協は、1番が特に有名で、演奏機会も多いのですが、最近ではこの3番も良く演奏される様になりました。ラフマニノフは、ショスタコービッチと時代を共通しますが、その作風は全く異なり、ラフマニノフはローマン派の作風を継ぐ最後の作曲家と言う事もあって、最近改めて注目される様になっています。
そして、彼の交響曲なども演奏される機会が増えており、私の音楽ライフでも針を落とす機会が増えています。

4.新国立劇場 オフヘンバック/オペラ「ホフマン物語」
11月28日(木)18:30開演で行ってきました。終演が22:30で、夕食にあぶれそうで忙しかった。毎度の事ながら付属のレストランは旨くないし雰囲気と値段は一流でも味2流は頂けません。毎度苦労する原点です。
このオペラ、作曲者は、言わずとしれたオフヘンバック最後の作品であり未完のオペラであります。この時期オフヘンバックは、超有名人で人気作曲家でした、加えるにフランスはオペラ全盛期ですから、言う事無い作品であります。
未完と言う事が気になります、どこが本人の作かですが、良く判らないようで全編が協同作だったという事もありうると専門家が言っています。なにしろ、有名人ですから手分けをしたのも頷けますし、オペラのストーリーも短編小説風で、全編一貫して出てくるのが、ミューズとホフマンだけで、分担業作と言われてもなんとなく納得であります。
第三幕に幸田浩子が主役で出てきます。彼女のソプラノは、ウイーン仕込みだけあって、聴き応え万点、外人歌手に負けていません。楽しいオペラ鑑賞をさせて貰いました。
また、演奏が東京フィルで首席の黒木さんがピットから良く来てくれたとのエールに感謝でありました。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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