Phasemation フェーズメーション

colums会長のコラム

会長のコラム 150

4月に入って、何故か天候不順で寒くなったり暑くなったり、それが故か桜も「アッ!」とう間に消えてしまいました。
東京の芝、東京タワー下にある桜の名所、この桜を眺めながら食事の出来るレストランが有ります。毎年この時期には、行くようにしていますが、気まぐれな桜開花時期であります。普段から予約が必須のこのレスランですから、この時期まさに「運」次第です。なにしろ、桜が無くとも同じ料金ですから、知った人は、当然夢中です。私、たまたま今年は、1週間前の予約でしたがバッチリでした。今年は良い事あるよう願っています。
前号でお約束した、チャンネル・アンプシステムの「音作り」の話を忘れないうちに最初に話をさせて頂きます。チャンネル間カットオフ・フィルターの傾斜に付いて、チャンネル間ユニットの音質差がチャンネル間で程よくミックスして調和を図るから、6dB/octのルーズな傾斜にすべしと言いましたが、その理由として、もっと大切な理論的根拠があります。
オーディオ・システムの「良い音、悪い音」の評価として、絶対に逃してはいけない項目があります。それは、再生音がステレオであるかどうかと言う事です。言いかえると、視聴者の前方L,R のスピーカーに跨る音響空間に演奏者の位置するステージが見通せることです。この現象は、「低音だ」「高音だ」「ノイズだ」と言う議論の前に実現しなければならないオーディオ・システムの必須条件であり、これを実現すると音は必然的に良くなります。「低音がどうだ、高音がどうだ、鮮度は」などと言う問題は、既に解決されなければ実現しない、オーディオの必須条件であります。世のマニアの方々で、このステレオ現象を理解したと言いつつも、本物を体験していない人は大勢居られます。録音スタジオのモニター室で聞くのが手っ取り早い方法ですが、一般には殆ど不可能な体験です。
その実現の為に大切な事は、チャンネル間の位相差、F特レンジ間の位相差、アンビエンスとの位相差であります。その為には、フェーズリニアー式のチャンネル・デバイダー・フィルターの使用が、必須条件となります。これを、アナログ式で実現するには6dB/octフィルター以外では極めて難しく、実現には複雑回路が必要になります。
この点、デジタル式フィルターですと極一般的に実現できるのですが、入力信号をAD/DAのくり返となり、音の鮮度と言う点で問題が生じます。この点、前号で述べたように、6dB/octのルーズな傾斜でも、立派なチャンネル・デバイダーが実現出来るわけですから、デジタル式フィルターの世話にならずとも、シンプルなアナログ式で充分なのです。ここで注意する事は、シンプルなフィルター常数の決定に際して、オームの法則に則った計算が必要なのですが、ご存じのように、素子に入力される信号元のインピーダンスは「ゼロ」そして受け側のインピーダンスは「無限大」と言う条件下でこのオームの法則が成立するわけですから、実際には計算式通りに常数は定まりませんで、多少のカット&トライによる手間が必要であり、注意が必要です。
と言う事で、デジタル・フェーズ・リニアー・フィルターなどのハイテクに走る必要は全くないと言うことが断言出来ます。良い音を造る原点は、「シンプル・イズ・ベスト」である事を忘れてはなりません。

さて、今月の音楽ライフです。
4月2日木曜 新国立劇場にてヴエルディー/オペラ「運命の力」 6.30開演で行ってきました。例によって、終演が殆ど10時でした、環状6号の下を通る首都高が完成したお蔭でトラフィクは極めて好調、自宅に帰ってからの食事でしたが、少しばかり早目になってハッピーでした。
当日の指揮が、ホセ・ルイス・ゴメス、新進ながらヨーロッパで活躍する若手、新国立劇場初登場。オーケストラが、東京フィルハーモニーで、友人のコントラバス首席奏者の黒木岩寿がピットインしていました。翌日には、演奏の感想をメールでやりとり、近々の食事会を約束し、舞台の裏話が楽しみとなります。
歌手陣は、例によって主役クラスの4人が外人でしたが、主役に近い重要な役柄の神父(バス)に松位浩が出演しており、中々の出来映えに感心しました。テノール(アルヴァーロ)が、ゾランドロ・トドロヴィツチ、新国立劇場の常連でヨーロッパでの活躍が主な人です、安定した実力者と言えましょう。ソプラノ(イアーノ・タマー) この人もヨーロッパを主に活躍する人で、華やかなスピントソプラノのベテラン、国立劇場には2度目の出演であります。
作曲時期は、イタリア王国成立間もない頃で、統一運動の英雄と観られていたヴェルディーは国会議員を務めながらも、政治への関心が薄れていた時期に、ロシア帝室歌劇場からの高額報酬での依頼を受ける事に始まります。このオペラは初演後に改修されますが、初演当初より好評判で、序曲を始め各所に素晴らしいアリアが有って見応えのあるオペラです。前作の「仮面舞踏会」、後作の「ドン・カルロ」に挟まれた為か、或いはそのストーリーがあまりも悲劇である為か、公演機会は前後の2作よりも少ないのが気になります。

4月11日土曜 神奈川フィルの定期演奏会音楽堂シリーズ 15.00開演で神奈川音楽堂に行ってきました。
川瀬賢太郎指揮による神奈川フィル、 演奏曲目は、ホルン独奏が当楽団首席奏者の豊田実加による モーツアルト/ホルン協奏曲第3番、ハイドン/交響曲第45番「告別」、そして後ステージが、シューマン/交響曲第3番「ライン」の3曲でした。
このホールで聞くモーツアルトのディベルトメント風の曲は素晴らしく、改めて音楽の楽しさを見ました。やはり、生は生でも音響が人間の感性に敏感に影響する事を改めて体験した音楽堂コンサートで、ハイドンの交響曲「告別」に於いても同じ感動を得ました。
後ステージで演奏された、シューマンの交響曲第3番は、最近マーラーやブルックナーが、事の他に持て囃されますが、この曲はこれらのもの以上により素晴らしい曲ではないかと感じました。多分、実際には常識かも知れませんが、私には生演奏の感激によって実態を知ったのかも、生演奏だから感激を味わうことが出来たのかも知れません。この感激を思い起こしつつレコードを聴聞いてみると、改めて音楽を知る楽しみを認識し感無量でした。
若い神奈川フィルの常任指揮者、川瀬賢太郎の今後が益々楽しみな神奈川フィルの定期演奏会でした。

4月25日土曜 午後2時開演の神奈川フィル定期演奏会 よこはまみなとみらいホールに行ってきました。指揮が川瀬賢太郎 コンサートマスターが石田泰尚 演奏曲目が、レスピーギ/交響詩「ローマの噴水」、「ローマの松」、「ローマの祭」でした。
このローマ3部作の全曲を一度に聞くのは初めてでした。この曲、今まで思って以上に素晴らしい曲であることを改めて知り、指揮者の川瀬賢太郎と言うシェフの我々音楽ファンの心を見透かす才能と、音楽を見る目線は素晴らしいと改めて思った次第です。
まるで、私の心を見透かしている様で、「ほら見ろ! 音楽とはこう言うものだ」と言われているようで、兎に角、素晴らしかった、その素晴らしさを改めて知らしめられた感じです。

4月29日水曜 「昭和の日」の休日 八ヶ岳高原音楽堂にて、午後4.30開演で渡辺貞夫コンサートに行ってきました。
「なべさだ」のこのホールでの演奏会は初めてです。このクラシック演奏の為に作られたホールでのジャズコンボ演奏は、以前にも例が有りましたが、これほどまでに満席状態での演奏会は初めての経験です。バンドの編成は、ピアノベース、ドラム、そして自身のアルトサックスと言うカルテットで、ピアノが、林 正樹、ベースが中村 健吾、ドラムスがデニス・フレーゼ、そしてリーダーなべ貞のアルトサックスでした。ピアノの林以外は全てバークレーの出身者と言うのも何かをイメージします。
演奏は、流石に渡辺貞夫でありまして、同世代の日本人アーティストに比べるとその差は歴然でありました。演奏曲目は、自作曲から「スマイル」の様なスタンダード曲に至り、言う事無しのスリリングで緊張する休憩無しの1.5時間に及ぶ演奏でした。普段ですと、通路になるべき場所にも椅子が置かれ、パンパンの満席で、音響重視のこのホールですが、ジャズ演奏だから出来たのかも知れません。それでも、ベースだけはギンギンにPAが利いて、悪響きのうえ細かいフレーズは埋没状態、少し残念でしたが仕方無いでしょう。ただ、他の楽器は生音に気を使ったミキサーの腕も有ってと思うが、全て言う事なし生音を堪能しました。残念ながら、このベースの音が後まで耳に残り、結局のところこのホールはクラシック音楽向きと言わざるを得ないでしょうが、ジャズ演奏の楽器音量の差は聴くものにとって大きなマイナス要素でした。
当日のホテルの様子です、渡辺貞夫と言うスパースターですから、満席も当然でしょうが、金持ち風オジサンが若い女を連れたカップル、分っているのか不明な例によってブランド志向の金持ちオバサンが目につきます。また、何故か駐車場もベンツ、マセラッテイなどの高級車が多かったのも気になります。
当日の費用は、コンサートのチケット、夕食付宿泊費占めて35,000円、家内と二人で70,000円です、高いか安いか、因みに新国立劇場は20,000円/人前後で済んでいます、掛る費用対効果は比べようも無い事です。
この高原ホテルの音楽堂も今年40周年とのことで、大物アーチストの連続出演で、5月はバイオリンの庄司紗矢香のコンサートと大物アーチストが続きます。私も既にチケット購入すみですが、やはり私もブランド志向のオジサンかも知れませんが、今旬のバイオリニスト庄司紗矢香の生演奏は魅力です。
この1.5時間は、休みなしの通しでした、オペラ公演で慣れた私は大丈夫でしたが、演奏中にトイレに立つ観客もちらり有ったりで、この辺りはクラシック演奏会ではあまり見かけない光景です。

この演奏会が4/29の月末連休前で、私の予定もパンパン状態、と言うことで月末原稿〆に間に合わず、HPアップが遅れてしまいました、お許し頂きたくお願い致します。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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