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colums会長のコラム

会長のコラム 094

イタリアオペラツアー 後編

チンクェ・テッレの観光と昼食を終えて、夕刻までにボローニアのホテルへと向かいます。バスによる移動とは言え可也の疲労でしたが、この日のオペラの鑑賞は有りませんで、例によって夕食時のワインの鑑賞、あとはホテルにて休息となります。
ボローニアは、恵み豊かなポー川の流域に広がるエミリア・ロマーナ州の州都であります。ミラノからローマに続く交通の要衝として古代から栄え、ボロニア大学は特に有名です。昼間はボローニア市内観光ですが、私にとっては2度目の訪問で気が向かない状況でしたが、やはり鮮明に覚えているのは大学の解剖室ぐらいで、あとは殆ど忘れており、新鮮な感覚で観光していました。
夜は、「ボローニア歌劇場」にてヴェルディ/オペラ「椿姫」の鑑賞となります。私がこの劇場を訪れるのは2度目でありまして、ここの音響は鮮明に憶えておりますので、今回はオペラ鑑賞に集中出来ました。このオペラ劇場の観客数は1000人弱のこじんまりした劇場ですが、だからと言ってオーケストラや舞台装置は簡略化されたものではありません。此処で公演されるオペラこそ「ザ・イタリアオペラ」と言っても良いのではないでしょうか。来年は、テノールのフローレス、リチートラ、カウフマン、そしてソプラノのランカトーレ、テオドッシュ、などの今世界で最も旬と言われる歌手陣を伴って、魅力の3つの公演を持って来日します。
その本拠地のオペラ劇場 テアトロ・コムナーレの名の通り素晴らしいオペラ公演でありました。指揮が、M・マリオッティです。この人は30歳そこそこと聞いておりますが、このボローニア歌劇場の音楽監督であり、来年の日本公演にも同行すると聞いています。と云うことで、指揮者のマリオッティはハウスオーケストラとのコンビは中々のものでありまして、歌手への気使いに細やかなものが感じとられ素晴らしい「椿姫」の公演でした。
出演者は、ダブルキャストでありまして、当初はデビーアの出演が報じられていましたが、デビーアではなく残念でした。それでも、素晴らしいソプラノ歌手であり、流石「ボローニア歌劇場」の実力を思わせる傍ら層の厚いイタリアのオペラ環境と納得しました。

ボローニアの良く見かける街並み ボローニア歌劇場内部
小規模のわりに標準的な内装

昨晩は遅いオペラ終演と言う事もあって、ゆっくり目の出発時間でパルマに向かいます。パルマは、ミラノに向って北上する街道筋上にあり、ボローニアから100km弱のボローニア寄りに在ります。そしてトスカニーニの生誕地であり、この郊外のヴーセットがヴェルディー誕生の地であり、ここパルマにて毎年この時期にヴェルディーフェスティバルが開催されます。
この日の夜は、パルマ王立歌劇にてヴェルディ/オペラ「イル・トロバトーレ」を鑑賞する予定ですが、昼間は市内観光でトスカニーニやヴェルディの縁の地を訪れます。加えて、何と言ってもここはハムとパルメジャーノチーズの産地ですから、参加者の目はチーズ屋さんに向いています。1kgにカットされたパルメジャーノなど日本ではまず見る事は有りません。それが極普通に店に並んでおり20ユーロ程度ですから2千円チョットです。お土産嫌いの私も沢山かってしまい、これから先の旅行ヲ考えずニ大変でした。
オペラ鑑賞の前の夕食は、沢山食べることは禁物ですから、夕食は軽くチーズとハムだけと言うお誂えのレストランに行きました。パルメジャーノと言えばパスタに掛ける粉状に砕いたものをイメージしますが、ここでは半生のパルメジャーノをカンナで削いで、薄く切ったハムのようにしてハムと一緒に出てきます。ここでは、火の通った料理は無いのですが、このチーズとハムにパンの組み合わせは本当に美味しくて、ワインの進むこと無意識であり、後を考えずに飲んでしまいました。
さて、パルマ王立歌劇場ですが、ここはミラノほどの大きな劇場では有りませんが、ボローニアよりもはるかに大きな劇場です。ボローニアとは僅かに100km程度しか離れていないところにこれだけ立派なオペラ劇場があるのですから、イタリアでの音楽家の需要が多いのが分かります。
昔から日本人がイタリアに勉強に行き、ここで活躍する事例が多いのも納得できると言うものです。優れた作品が多い作曲家として、ヴェルディはとび抜けた存在でありますが、その中でもオペラ「イル・トロバトーレ」は優れた作品と思います。
その「イル・トロバトーレ」をここパルマ王立歌劇場で鑑賞します。ストーリーは少しグロテスクなところがありますが、音楽は素晴らしく私が最も好きな作品の一つであり、絶対に飽きない作品です。当日の公演ですが、主役のテノールは韓国人のようであり、あまり好感の持てる出来ではありませんでした。しかも私の席は最前列の低音楽器の前で殆ど第一バイオリンの聞こえない席でありました。しかし何と言ってもこのオペラの作品力は只ならぬものですから、すっかり嵌まってしまい観劇後感としては良かった部類と言えましょう。オーケストラを始め可也実力を持った劇場と見受けました。このヴェルディ フェスティバルは、毎年行われるようですから、再び訪れる機会があるものと思います。次回は席を検めて来るようにしたい、むしろそうすべきと思いつつ反省しきりであります。

パルマ王立歌劇場 パルマの街中のヴェルディ橋

翌日は、ここパルマ郊外のヴェルディ生誕地であり、ヴェルディ生存中に建設されたブッセート・ヴェルディ劇場とその周辺のヴェルディの住んだ家など縁の地を観光しました。そして夜はこのブッセート・ヴェルディ劇場にてオペラ/アッティラを鑑賞します。このツアーの目玉の一つがこのオペラ/アッティラの鑑賞でありましたが、何とどうした事か席がダブルブッキングでガレリア席の立ち観となってしまいました。このガレリア席は正規の席でも舞台はみにくく場所によっては半分しか見えません。その様な席(場所と云った方が良いかも)での立ち見ですから、舞台をみる事は殆ど期待出来ず、もっぱら音楽を聴く事に専念と云うところです。この劇場は、形こそ馬蹄形の一般的なオペラ劇場の形をしていますが、観客数が300人程度で大変こじんまりしています。云って見ると昔日本でもよく見かけた田舎芝居と云うところでしょう。しかし、オーケストラや出演者、そして劇場を支えるスタッフは全てパルマ王立劇場からのものですから、公演のレベルは半端ではありません。しかも、このシーズンの特別なときにしか公演されないと言うから、大変貴重なものであったわけです。実に残念であり、ツアー主催者は恐縮し謝っていました。入場券の費用も返金されましたが、それで済む様な事なのでしょうか。何か割り切れないものが残る汚点で有りましょう。

ヴェルディの生まれた家 ヴェルディの別荘
別荘の庭 ヴェルディ劇場
(時計台の左が市役所、右が劇場)
オーケストラピットの上の平たい部分が舞台。
その手前が客席。劇場の小ささが判る。

さて、終演後はパルマのホテルに帰ります。翌日の夜は再びパルマ王立劇場にてヴェルディ/オペラ「シチリア島の夕べの祈り」の観劇であります。この公演での席は、4階のボックス席でありました。ボックス席の前列は平土間席より良いと言う人がおられますが、ロイヤル席ならいざ知らず平土間より良いと云う意見には私は賛成しかねます。
同じツアーのメンバー4人が同室となりましたから、写真は撮り放題オマケに録音までやりました。流石に録音は三脚なしでしたから結果は良くありませんでした。この状況なら、三脚を持って、プロ用ビデオカメラに録音機を構えても、誰からも文句を言われない、ボックス席の大きなメリットと改めて思いました。
このオペラはアリアに有名な部分が有って、良く知られた作品ですが、オペラとして演奏される機会は少なく私は始めて観るオペラでした。旅立つ前に確り勉強をして行きましたがそれでも、字幕の無いオペラ鑑賞は辛い処がありました。それでも本場の雰囲気と鮮度は何にも変え難い貴重な体験です。当日の目玉は、今旬のバリトン歌手L・ヌッチの出演でした。その上、加藤先生のコネで終演後は楽屋に訪ねて、ヌッチと一緒に写真を撮ってもらった事はこの上ない幸せでした。
公演そのものは、代役の不手際などもあって、決して良い結果では有りませんでしたが、このご時世ですから、まあ仕方ないですね。大金を支払って、初めてこの様なツアーに参加された方は、どうしても完璧を望まれて参画されていますから、何か割り切れないものが残ったようですが、公演そのものが大変な時節ですし、オペラ芸術が今後も続けられるのかと言う大問題を孕んだ時期を感じずにはいられないツアーでもありました。
(ヌッチさんとの写真掲載を控えさせて頂きます)

4Fボックス席からの開演前の様子 公演中の舞台

舞台は遠くに見えるが結構音は良く聞こえる、但し前列に限ってですが、でも舞台の息使いやオーラなどは到底届かず私は嫌いな席です。

明けて、翌日はバスにて街道をミラノに北上移動します。到着後はミラノ観光でありますが、私は3月にイタリア訪問時の由子さんに電話し、夜のオペラ鑑賞までツアーから離れての行動となります。そのときにミラノにて、作った家内のコートを受け取りに、そして私はワインの買出しにと走りました。ここミラノは帰国の原点であり何か安心した気になるから不思議です。
さて、スカラ座ですが、イタリア訪問の折にはここミラノ座だけを観て他所に行くと言うケースも多く、何回来たか数えられないのですが、地方のオペラ劇場を回って最後にここを訪ねてみるとこの劇場の大きさがただならぬ規模である事に改めて感じいります。
そして、観客にとってオペラ劇場は大きければ良いと言う訳には行かない事に改めて感じるのですが、それは逆に、観客数が多いから演目も充実しカネも掛けられるという利点があるのも事実です。
当日の演目は、ドニゼッティのオペラ「愛の妙薬」でありまして、ローランド・ヴィラゾンの出演が私にとって最大の興味でありました。このひとは、ザルツブルグ音楽祭でアンナ・ネトレプコと椿姫を競演しその出来栄えの素晴らしさはオペラファンであれば誰でも知っている存在です。一度は生の声を聞きたいと思っていましたが、その後喉の手術のために休んでおり、再起出来ないのではないかと思っていました。今回、そのローランド・ヴィラゾンが聞けると言う事で期待したわけです。
彼の声は、TVやDVDで散々聞いていますから、興味が募るわけです。しかし、残念ながら手術以前の声ではありませんでした。元々歌の上手い人ですから、確かにヴィラゾンに間違えありませんし、上手さに変わりは有りませんが、音域によって声量が違う、と言うか声質が違うと言うか、素人の私には表現のしようが判りませんが、兎に角、違うのです。しかし、歌いまわしや声質は紛れも無くローランド・ヴィラソンであり、その点ミーハー的感覚として満足でした。今後の精進の結果を期待するのみであります。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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