Phasemation フェーズメーション

colums会長のコラム

会長のコラム 089

6月のサマリー
1. 新国立劇場 R・シュトラウス/オペラ「影のない女」
2. 高輪オペラの会
3. 未体験ゾーンへのお誘い「USB-DAC導入セミナー」の開催
4. 石田康尚コンサート
5. 神奈川フィルハーモニー定期演奏会

1. 新国立劇場 R・シュトラウス/オペラ「影のない女」
オペラ「影の無い女」は、R・シュトラウスのオペラのなかで、最高傑作の作品だと思います。一般的には「薔薇の騎士」がポピュラーでありますが、作曲者の魂の入れ方からしてその深さが違います。
このオペラは、規模が大きく公演に費用が掛かりすぎるのでしょう、公演の機会が極めて少ないものですから、かく云う私もこのオペラ公演を生で観劇するのは、始めてであります。しかも今回の公演は、税金運営の新国立劇場ですから、最高のS席で19,500円と、オペラファンにとって大変有り難く感謝せずにはいられません。
R・シュトラウスは、モーツアルトのようなメロディーの美しいものを作曲せよと父親から遺言されていたと言われており、「薔薇の騎士」はモーツアルト/「フィガロの結婚」、そして、この「影のない女」はモーツアルト/「魔笛」をモチーフにしたものでありますが、まさしくそのメロディーの美しさは「薔薇の騎士」同様に、聴く者を酔わせてしまいます。
R・シュトラウスの作曲年譜から言うと、交響詩「英雄の生涯」、オペラ「サロメ」、オペラ「エレクトラ」と続き、オペラ「薔薇の騎士」、オペラ「影のない女」という順になりますが、R・シュトラウスは「薔薇の騎士」を完成して間もなく「影のない女」の構想に着手するのですが、その完成の前にオペラ「ナクソス島のアリアドネ」を完成させており、「影のない女」の完成まで7年を費やしています。そして完成したオペラ「影の無い女」は、モーツアルト/魔笛」を連想させるのですが、大編成のオーケストラを従えてのワグナー流のライトモチーフを伴った緻密な響きは、モーツアルトとは別の世界の陶酔へと聴衆をみちびきます。
R・シュトラウスの作品には、この後にオペラ/「カプリッチョ」が有りますが、我々一般的なオペラファンが楽しめるオペラ作曲家は、彼が最後と言って良いでしょう。氏以後のオペラは、はっきり言って楽しく有りませんし、面白く有りません。
当日の演奏は、指揮がエーリッヒ・ヴェヒター、オーケストラが久し振りに東京交響楽団コンサートマスターがグレブ・ニキティンでありまして、オケピットは全く立錐の余地の無い大編成そのもの、そこから醸す音は迫力満点の素晴らしい演奏でありました。
今月の新国立劇場は、オペラ「カルメン」の公演もありましたが、コラムに取り上げるのは割愛させて頂きます。

2. 高輪オペラの会
毎度レポートしております、高輪プリンスホテルにて昼食を伴ったオペラの会であります。
今回は、ヴェルディー/オペラ「リゴレット」が演奏されました。
このオペラは、劇中で演奏されるアリア「女心の唄」があまりにも有名で、その心地よいメロディーがオペラとは関係なく広く聞かれております。そのロマンチックな印象からオペラのストーリーも同様な印象を持たれていますが、実際はグロテスクと表現するほどの凄さのオペラであります。しかも聞き応えのある四重唱やアリアが有って、全編に渡って緊張して聴かされてしまう、ヴェルディーの最高傑作であります。
当日の狭い舞台とピアノ伴奏だけで、この迫力あるストーリーを演出出来るのか、また登場人物として5人は絶対に必要ですから、舞台は大掛かりになるはずで、大変興味の沸くところでありました。当日の出演者は、リゴレットにバリトンの泉良平、ジルダにソプラノの松原有奈、マントバ公爵にテノールの水船桂太郎とベテランを配し、加えて必要な計5人の歌手を揃えてのお馴染み河原さんのピアノ伴奏によるもので、オペラ「リゴレット」の内容を余すことなく表現し、素晴らしい公演でありました。当日の公演は、普段以上に出演者が多く、色々な面で主催者はご苦労されたものと思います。

3. 未体験ゾーンへのお誘い「USB-DAC導入セミナー」の開催
次世代オーディオとして、今旬の話題となっております当社の商品「HD-7A」の導入セミナーを御茶の水K'sスタジオで開催しました。
パソコン(以下PCと言います)を介して音楽を聴くことに違和感を持つ我々世代でありますが、録音スタジオではデジタルオーディオ草創期より、PCによる録音、編集は常識と言うよりも必須のツールでありました。今更、珍しい事でも無いし、ましてや、粗悪な音楽再生器と言うイメージも的外れでありますが、MP-3やi-Podなどのその強烈なる登場によって作り出したイメージは、残念ながら我々オーディオファイルにとって負のイメージとして残っています。
我々が目指すハイ・ディフィニションPCオーディオは、アナログオーディオに負けない音質を以って感動を創り出すものであり、決定的な違いは元の音楽情報を間引かずに、更にハイ・ディフィニション化し、PCのクロックから独立したシンク信号発信器を内部に持つ事に寄って実現しています。
従来、当社商品紹介のイベントは、商品を扱う専門店の主催が主でありましたが、この「HD-7A」は従来の商品と性格が異なり、オーディオファイルの方々に広く体験して頂かなければなりませんので、我々が主催して開催しました。何分、始めての経験で有ったために、お集まり頂いた方々にはご不便やお気を悪くされた方も居られるようで、今後の反省材料に事欠かないものが沢山ありました。
しかし、今回お集まり頂いた方々は多かれ少なかれ、この新しい潮流を敏感に感じ取られた方が多くご参集されて、私共の「初心者」なる失礼な表現も物ともせずに、お訪ね下さったことに感謝しきりであります。我々としては、もっと広く、大勢のオーディオファイルの方々に体験して貰い、新しい世界にご案内したいと思っていますので、これからも宜しくお願い致す次第であります。
是非とも商品の資料をご請求頂いてオーディオの新しい世界へと扉を開いて頂く事を願っております。

4. 石田康尚コンサート
おなじみ、神奈川フィルのコンサートマスターの石田康尚のバイオリンコンサートが、長野県白馬のホテルで行われ行って来ました。
このホテルはスキー場が本業でありますが、そのロビーは広くて響きが良くコンサートには最適であり、このホテルの遊休設備活用の一環として、ホテルが主催する企画でありまして、一泊食事付で料金も可也安く設定されておりました。私は、コンサートの仔細は気にせずに石田コンサートマスターの演奏をリラックスして聴けるのではないかと、それだけの期待で参加しました。
松本へは仕事やサイトウキネンで良く行っていますから、何の躊躇も無く車で出かけたのですが、土日の高速乗り放題1000円と言う初めての経験でドライバーのマナーの悪さを知らされたのは予定外でありましたし、加えて、ホテルでの悪い印象も予定外でありました。ホテルには、チェックインの指定時間より大分早く着いてしまい、チェックインまでの時間、ホテル内の設備でゆっくり読書でもしようと思いましたが、チェックインは愚かホテルの設備は一切使用不可との事、それは無いでしょう、ここはリゾートホテルですよ。結局近くの道の駅で時間を潰すしかありませんで、ここで可也落ち込みました。
それでも、東京から7台の大型観光バスが仕立てられている事を聞き、その到着前にチェックイン出来た事は幸せでありまして、温泉の大浴場は貸切の如く気持ちの良いひと時でありました。しかし、安いものは安いだけあって、それなりです、客筋は子育てが済み旦那の面倒見も済み、生活の熟練達人のおばさん集団です。会場への入場は順番が決められていますが、先に入った者は友達の分まで席取りに血眼、マナーの悪さは極限でありました。
それでも、バックステージではありますが、最前列の席が確保出来て石田のヴァイオリンの音がダイレクトに聞けたことは、行った目的を果たした思いでありました。しかしこの手のコンサートには、もう、絶対に行かないし、このホテルの根性も透けて見えるようで、冬のスキーシーズンであろうとも行く気にはなれません。

5. 神奈川フィルハーモニー定期演奏会
6/26(土)みなとみらいホールにて行われ、私にとって6月最後のコンサートでありました。この日は、定例の田園調布のお宅で行われるレコードコンサートとバッティングでしたが、こちらは失礼することにして神奈川フィル定期演奏会に行く事にしました。私のプライベートの仲間は、嘗ての企業戦士だった人達が多いのですが、このレコードコンサートに限らず、会合と言えば何故か土日に設定される事が多いのです。
さて、神奈川フィルの定期演奏会の最近の傾向として、吟味され充実した内容になっているように感じ、我々応援団にとって益々楽しみになっております。そして、今月の演目は、ブラームスのV協と交響曲1番でありまして、世の中には名演がひしめくジャンルの選曲であり、神奈川フィルも聞かせるオーケストラへの変身を感じます。
指揮が、小泉和弘で、この人はベルリンフィル定期演奏会、ザルツブルグ音楽祭でのウィーンフィル、メトロポリタンなど世界一流オーケストラを指揮しており、噂には聞いておりましたが、私が聞くのは初めてでありました。ブラームスの一番は、聴き答えのあるしっかりした演奏で正しく一流と言っていいでしょう、そして第二楽章のコンサートマスターによるソロは御馴染み石田泰尚の演奏です。みなとみらいホールで生演奏が聴けると言う、この至福の時を、そして我らがオーケストラ神奈川フィルと共に横浜に住む幸せを感じるひと時でした。
ブラームスのV協は、当日プログラムの添え物の感を免れませんでした。ヴァイオリンソロの矢野玲子は、東京音大、パリ国立音楽院その他でも卒業した学校はことごとく首席で卒業し、コンクールでの優勝実績も多数あると「そのりす」に書いてありました。確かに演奏は上手いです、非の打ち所が有りません。しかし、私には「面白くない 優等生の演奏」との印象が残るものでありました。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

インタビュー掲載

コラムアーカイブ