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colums会長のコラム

会長のコラム 060

・バッハ・フェスティバル その1 聖トーマス教会での衝撃

6月12日のオープニングコンサートに始まり、6月22日のラストコンサートで締め括るライプチッヒ・バッハフェスティバルに行ってきました。
このフェスティバルはライプチッヒ市が主催するもので、メイン会場が聖トーマス教会になります。6月12日のオープニングは、市長の挨拶と主催責任者の挨拶に始まり、その後にコンサートが始まるのですが、この教会の構造が見た目にはコンサートには似合わないもので驚きでした。と言うのも客席とオーケストラが全て教会祭壇を向いています。しかも、オーケストラは客席の後ろ、つまり、パイプオルガンの前で天上に近い高い場所にありますから、これで良い音楽が聴けるのか大変疑問を感じてコンサートの始まりが待遠しい状態でした。

トーマス教会平土間観客席から見上げたステージ
トーマス教会祭壇(カトリックと違って質素な作り)
祭壇から見たステージ

退屈なドイツ語の挨拶が終わっていよいよ演奏のはじまりです。「いやー驚きました」言葉で言い表せないほどのカルチャーショックで、音楽好きを自認する私ですが、今の今迄、教会での教会音楽を聴いたことが無く、始めてと言う恥ずかしさと、この異次元の音響にドキモを抜かされました。
教会音楽の名録音として知られる、プロペリゥスのカンターテドミノのLPが真髄と思っていましたが、ここの音はこんな物では有りません。オーケストラは聴衆の後ろの高い所です。指揮者も当然その場所です。この状態で何故この様な素晴らしい音が聴けるのか、教会の残響時間が如何の、間接音が如何の、やれ分解能が、とか言う次元では有りません。音が上から降ってくるのです。普段我々が接するコンサートホールでの演奏やパッケージメディアでは絶対再現出来ない音であり、見事な音楽だと言い切れます。
今まで私は、オーディオ技術によって「生の音」は再現出来ない、如何に「らしさ」を求めるかが我々の仕事だ、などと言っていましたが、この次元の違う音は体験もせずに「らしさ」も何も有ったものでは有りません。カルチャーショックに冒された今は、ここの音に付いて何とも言いようの無い状態で、暫く時間を置いてから考察してみたいと思います。
この日の為にソニーの半導体録音機を買ったのに忘れて行くとは、「ボケ」た自分に腹立たしい思いです。
ちなみに、この夜の演奏は、オルガン:ウルリッヒ・ベーメ、合唱:トーマス教会合唱団、オケ:ラ・ストラバガンツァ・ケルンでした。曲目は全てバッハ一族の教会音楽です。

トーマス教会祭壇に向かって左側観客席レベルに設置されたバッハ音楽演奏用のオルガン

オルガンはバッハが生まれる何百年も前から存在し、時代と共に変化し続けている。
このオルガンでロマン派の音楽の演奏は出来ないし、最近作られるオルガンは殆どが、
ロマン派音楽用のものであり、このオルガンでバッハを演奏する事は出来ない。
トーマス教会のステージにはロマン派音楽演奏用の立派なオルガンも設置されている。

バッハ音楽演奏用のオルガンのキーボート(ストップの数や位置はメインのものと大きく異なる)

オープニングから3日間ライプチッヒに滞在し、6月15日の日曜のカンタータ礼拝に参加した後にバッハの生誕地であり、マルチン・ルターの生誕地でもあるアイゼナッハに向けて出発しました。
そのカンタータ礼拝の演奏がゲバントハウスオーケストラ、指揮がトーマス教会カントールのゲオルク・クリストファー・ビリー、合唱がトーマス教会合唱団、と言う贅沢。その上オルガン奏者がバッハ弾きとして世界的権威のウルリッヒ・ベーメと言う豪華さで、しかも入場無料です。私は、この演奏中に行儀が悪いのを承知で、色々な場所を転々として音響を確認しました。「良い悪い」で結論付けるのは問題が有り、聴いた感じを述べますと、オーケストラと同じレベルの二階席は比較的コンサートホールに近い音で私には馴染めます。ここは席数が少なく有料コンサートの時にこの場所の確保は難しいようです。平土間はオーケストラの真下あたりが一番感銘を受けます。そして祭壇に近くなるに従って鮮度が落ちるし感銘度は薄れるようです。

さて、私達の旅は、3日間ライプチッヒに滞在しバッハの生誕地アイゼナッハに移動し、バッハが幸せな子供時代を過ごした土地を見学したあと、バッハが8歳の時父親をなくし孤児に成って長兄を頼って生活した地を周り、バッハの成長するえにしの地を訪問します。そして、バッハフェアー最後の3日間を再びライプチッヒで過ごすために、そして、ラストコンサートの定番「ロ短調ミサ曲」を聖トーマス教会で聞く為に、再びライプチッヒ入りします。この「コラム60」はこのツアー始まりの速報版のつもりで書いています。

続編をお楽しみに。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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