Phasemation フェーズメーション

colums会長のコラム

会長のコラム 140

腰痛に悩まされた5月下旬からペイン・クリニックに通い始め、6月末までに6回治療を受けました。初診の時に最低でも4回は受けて貰わないといけないと言われましたが、既に6回の治療を受けました。
少しづつですが、良い方向に向かっているようです。日常生活にはまだまだ支障が有り、会社の代表を務める者としては、厳しい生活環境であります。
回りの人達の協力が欠かせず、改めて自分の居所を知る良い機会を感じ、大げさですが人生観の仕上げに掛かる思いであります。

3チャンネル・マルチ・アンプシステムもDEQXをハンドリングする栗原さんの入魂の度あいも只事では無く、私の描くオーディオ理念に理解を示して頂き、軽井沢の事務所から何度も古淵の拙宅にご来宅頂いて来ました。
これと言うのも、良い音を求める基本姿勢が、このDEQXに備わっていればこその欲と言うものであります。私は、世に出ている音場調整器なるもの殆どの機種を体験した結果から、デジタル嫌いの私をして熱中させる基本性能を備え、これはもう優れものの誉れであります。
そのDEQXの時間軸調整機能に1.0m以上の調整能力が自動音場補正モードには無い事が判明し、WE-22Aホーンをコントロール仕切れていない事が、私の提起している問題点の原因だったと言う事です。
そこで、全ての機能をマニュアルにし、手動でWE-22Aの1.7mの時間遅れを補正し、音場補正も全て手動とする事で再調整しました。
その結果私の求める音を実現する事になるのですが、折角のチャンスですから、ここでWE-22Aホーンの1.7m時間遅れを補正したものと、しないものの音を聴き比べてみると、その音質の差は歴然で音場定位、ステージ感、は当然ですが、聴覚に影響する度合いは別次元である事を体験し、マルチスピーカー・システムにおける時間軸整合は、必須である事を改めて体験した次第です。
DEQXには4種類の異なった条件(カットオフ周波数とそのロール、時間軸のディレー時間、音場補正の定数等)をメモリーする機能を有し、随時切り替えて呼び出すことが出来ます。そこに、6dB/octの場合と48dB/octの場合,ディレー時間の「有る/無し」、などの組み合わせを記録し、試聴してみると、ロールを急峻にした場合は我々の経験した事の無い「音」を聴く事が出来ます、これが良い音と言うのかどうか、兎に角コントロールされた音であり、ある意味デジタル機器をクロックによって同期を取ったときの様な音を体験します。
このカットオフのロールをシャープにした時と言うのは、例えばMid,Hiのカットオフ・周波数は、4kHzですからバイオリンの音は周波数によってMidレンジとHiレンジに明確に分けられてしまいます。また、高域のスピーカーの設置位置が高いところ、低域のスピーカーの設置位置の低いところで、低域音源は下、高域音源は上と明確になり、バイオリンは上、低音楽器は下に定位します。この状態が不自然にコントロールされた音として聞えてくるのです。
どうも、3チャンネル程度の場合だと急峻なカットオフロールは、理に叶わないと言うことの様です。だから多チャンネルが必要と言う事に繋がるのかも知れませんが、それは、設定する条件が増々複雑になる事を予感させます。
と言うことで、私の3チャンネル・システムも6dB/octが最適と言うことで、1件落着かもしれませんが、多チャンネル・アンプ・システムの可能性と方向性も同時に見えてきました。まだまだやる事が尽きないのかも知れません。
栗原さんは、「鈴木さんの好きな音」と言って6dB/octの音を皮肉ります。しかし、今のところこれに勝ものは有りません、チャンネル・アンプをやって来て、限りない可能性を暗示され、未だ、未完ではありますが、この辺りで、一応の総括、(中間総括かな)、チャンネル・アンプシステムの技術的な見解をまとめておきたいと思うので、いま暫く、お付き合い下さい。

スピーカー・ユニットを複数個使用したメーカー製のフル・レンジスピーカーは、パワーアンプとスピーカーの間に入れるネットワークを必要とします。このネットワークは、電力を消費するスピーカー・ユニットにLCR素子を挿入するので、理論的にも理に適わないところが有って、メーカー技術者にとっては、腕の見せ所でもあり泣き所であり、とてもアマチュアが踏み込める領域では有りません。
この点、少し詳しく話しますと、電力を消費するデバイスは、消費する電力すなわち電流の変化によってインピーダンスが変化すると言うことです、静的条件で説明されたオームの法則が成り立たないと言う事です。更に言うと、スピーカー・ユニットは周波数によってインピーダンスが変わるのです、そこに無理矢理オームの法則を持ち込むところに、アマチュアが立ち入れない領域があるのです。
良い音を目指す、好きな音を目指す、このアマチュア魂にとって、理論的に明快で実現容易なものは「マルチ・アンプだ」と言って憚らないのが私であります。しかし、過去うまく行かない事例が多いのも事実であります。
その原因の多くは、チャンネル・デバイダーにあると言ってよいでしょう。コンサート・ホールの「音」や、音楽鑑賞にマインドを持たない、そして「音」造りに哲学を持たない、技術者の驕りによる結果なのです。
アナログ式デバイダーに付いて言うと、フィルター回路にオペアンプを多用した事にあるといっても言い過ぎでは有りません。一方のデジタル式に付いては、プロセッサーの前段に「容易」と言う理由だけでVRコントロールを何の疑問も無しに使用する無神経さにありました。
このように、良くないデバイダー機器の中から選んだものが偶々良かったと言うのは、それなりと言うことですから、やがて使用途中に飽きが来るものです。結果とて、はてしない、泥沼に嵌る結果、チャンネル・アンプ方式は良く無いとなるのではないでしょうか。
最近の有名スピーカーでも使用するユニットは、専門メーカーから買い入れて組み込むケースを多く見かけます。と言うことは、アマチュアでもそのユニットを購入する事が出来ると言う事です。チャンネル・アンプを目指すハイ・アマチュアの方々は、往時の名器の、アルテックやJBLのユニットを使用する事が多いのですが、それは偶々目指す名器が手に入ったから、チャンネル・アンプにトライと言うケースが多いようです。
しかし、優れたスピーカー・ユニットが手に入ると言うことであれば、名器の上を行くスピーカーシステムを我々アマチュアでも、作れるチャンスが有ると言う事で、初めからここを目指して、チャンネル・アンプをめざすべきと強調したいです。
私に残されたオーディオ道も余命が限られています。オーディオ機器は工業商品でありますが、芸術の表現と言う道具から考えると、そこには、音楽再生に対する哲学が求められても仕方がないし、工業商品たれどもそこには限りない芸術への思いを埋め込んだ魂が、入魂される必要があります。この魂の質を競うのが、オーディオ業界の再生に繋がるものと確信しています。
オーディオファンの中には、雷の音、蒸気機関車の音、ガラスの割れる音の再生に情熱を注ぐ方もおられます。それは、私にとって領域外の事であることを付加させて頂きます。

今月の音楽ライフです。
6/4:バルバラ・フリットリ/リサイタル、6/18:オペラ/カルメン、6/21:新国立劇場/池辺晋一郎/オペラ鹿鳴館、6/28:高輪オペラの会でした。
神奈川フィルの定期は、運悪く腰痛の悪化からパスしました

1.バルバラ・フリットリ リサイタル

6月4日(水)19:00開演で東京オペラシティーコンサートホールに行ってきました。先月31日のローマ歌劇場公演でのヴェルディー/オペラ「シモン・ボッカネグラ」のタイトロールを体調不良でキャンセルしたバルバラ・フリットリ、それから日が経たない6/4のリサイタル、またキャンセルも有りかと思いつつ会場に向かったのですが、数日前のあの体調不良と言うのは、本当なのかと疑うほどの良い出来栄えでした。
しかもピアノ伴奏のリサイタルと思いこんでいたのが、何とアレッサンドロ・ヴィティエッロ指揮による東京フィルハーモニーのフルオーケストラを伴うもので、中々の価値あるコンサートでした。
キャンセルを多発する人ですが、やはり、この人は現代ソプラノ歌手のなかで超一流の存在です。フォルテにおける歌唱は、怒鳴る要素を全く感じさせない、その声量は流石でありました。途中にオーケストラ演奏による間奏曲などが有って、聴き手も一息入れるタイミングなど、ステージ感覚も流石であります。
アンコールもスピントソプラノ系のオペラのアリアを3曲も歌うサービスぶりで、その前の公演キャンセルは何だったのか、全くその気も見せない舞台姿は、一流プロとして立派と言うべきか、数日前にキャンセルで振られた観客としては、何か割り切れない名歌手の姿でありました。

2.スロベニア マリボール国立劇場 ビゼー/オペラ「カルメン」

6月19日(木)オーチャードホールにて18:30開演で行ってきました。
マリボール国立劇場と言うオペラ劇場は、聞いたことも無いし全く私の知らない劇場だったのですが、リニューアル以後のオーチャードホールに興味が有った事、そして当日のタイトロールがヴェッセリーナ・カサロヴァであった事に釣られて、行ってきました。
この公演には驚きました。なんと、この日は13:30開演のマチネコンサートに引き続いての18:30開演なので、2本立て公演です。しかも前日の18日も18:30開演で、このオーチャードで行われたのですから、長年オペラ鑑賞に通っていますが、カルメンの様なスピント歌唱を求められる大型オペラでは、初めての経験でした。
しかも、プログラムを見ると日本全国殆ど毎日回り歩き、まるで、田舎芝居の体です。
コンサートの主催者も開催場所によってそれぞれ違うのですね。だから、出演者はトリプルキャストとなっていますが、それでも、ソプラノやテノールの歌手は大変ですよ。まさか、カサロバもそのペースと言う事は無いでしょうが、開催場所ごとのキャストはプログラムに記載は有りませんので不明です。
オーケストラや合唱団もトリプルと言う事は無いでしょうから、しかしこの過密スケジュールでもやれるものなのでしょうか。私の観劇したステージは、ここオーチャードにおける連続3回目の公演最後の日でした。
そして、私の観劇日19日の主催者はコンサート・ドアーズと言うことでしたが、聞いたことの無い会社です。当日の観客は、いつも私の行くオペラ公演とは違う雰囲気で、若い学生風の人が多く、公演途中の舞台調整の場で5分ほど客席のライトが薄く点灯する間など、休憩と間違えて多くの観客が出口に向かい、ホールのスタッフが慌てて制止する様子など、普通では考えられない現象です。
この公演、私はカルメン役のカサロバ以外に興味が無く、チケット購入時もあまり検討もせずに購入してしまいましたが、改修されたオーチャードホールの音は以前通りの悪い癖を残しておりますし、それと関係あるかどうか解りませんが、何か額縁の中を見ている様な舞台、生演奏のオペラ公演の迫力というか、生演奏に包まれるオペラ鑑賞と言うには、あまりに感激に乏しいものでした。
カサロバの歌唱は、流石に他を圧倒していましたが、オペラ鑑賞は出演者、観客、ホールの容姿環境、全てのバランスにあると思います。キャストの割に安いチケットは要注意ですがこれは、私の不注意から生じたもので、以後反省あるのみです。

3.池辺晋一郎/オペラ「鹿鳴館」

6月21日(土)新国立劇場中ホールにて14:00開演のマチネコンサートに行ってきました。このオペラは、三島由紀夫原作の戯曲をオペラ化し池辺晋一郎が作曲したオペラで、新国立劇場での再演となる演目です。
一般的にオペラのストーリーには、繋がりに矛盾が有ったりして、音楽優先の感があるのですが、このオペラは日本人の原作によるオペラ化と言うことでしょうか、ストーリーの進行が実に正確であり、そのストーリーに音楽が絡んで行く感じで、我々の知るオペラのアリアなどは有りませんが、もっぱら、リアリティーを感じるストーリーに飲み込まれて行くものでした。映画音楽に長けた作曲者ならではの感じであります。
しかし、後半はバレーを効果的に絡ませ、オペラに貫録をつけて、見応えのある舞台であっと思いました。
指揮が飯森範親、東京フィルハーモニーの演奏で、出演歌手は全て日本人で、現在求められる日本人最高の歌手陣と思います。この公演は4日連続して行われ主役どころは全てダブルキャスト、出演は1日置きと言う具合にプログラムに記載して有りました。

4.高輪オペラの会 グノー/オペラ「ファウスト」

6月28日(土)グランドプリンスホテル新高輪/イル・レオーネにて12:00開演で行ってきました。
出演者は、バスの妻屋秀和、テノールの所谷直生、ソプラノの小林菜美、ピアノが藤原藍子と言う陣容で、何と言ってもバスの妻屋はドイツで活躍する実力者であり、この人の出演は、当日の出演者を引き立てる立役者であり、それ故か公演そのものは、まれにみる、素晴らしい出来映えでありました。
グノーのオペラ/「ファウスト」はどう言う訳か公演機会の少ないオペラで、私も劇場でオペラを観劇した事は有りません。当日の演奏は、妻屋のバスが一際光るものでしたが、それにつられたように、他の二人も素晴らしい出来栄えでした。
特に、ソプラノの小林菜美は、もともと実力のある人ですが、当日の出来は後半に行く程良く成って行き、最後は素晴らしいものでした。加えるに、台本の出来も良く、過去一番の出来だったと言っても過言ではないでしょう、藤原藍子さんのピアノも何時になく冴え、この日のためにフランスまでオペラ「ファウスト」の観劇に行き、勉強して来たと言います。
それと言うのも妻屋さんの出演が有ったからこそ、かも知れません。普段はレストランと言う狭い空間での素晴らしいオペラ鑑賞は、何事にも変え難い至福のひと時でした。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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