Phasemation フェーズメーション

colums会長のコラム

会長のコラム 103

何時もの年より早い暑さの訪れに伴い、7月と言うのに暑い日々に加え、電力不足に気兼ねをしながらのエアコン使用。加えて思いつき発言とも思える総理の原発発言にうんざりでありました。総理の原発への思いも判らぬでもないが、総理ともあろう立場の人が思いつき発言とは如何なものか。
毎年、7、8月は新国立劇場、神奈川フィルともに定期演奏会はお休みでして、何か手持ち無沙汰を感じつつも、大物コンサートの無い月もまたスケジュールに追われることなく、楽しみを求めての充実した暑い夏の7月でした。

1.食探訪の仲間と神楽坂へ
2.岡村喬生の新国際版/マダマ・バタフライの公開練習
3.バンドネオン奏者 三浦一馬のコンサート
4.目黒のジャズライブハウス/ジェイ・ジェイズの閉店
5.MA-1を自宅で聴く

1.食探訪の仲間と神楽坂へ
2組の夫妻と一人の独身女性の三組で食の探訪と称して幹事持ち回りで定期的に食して歩いています。私達夫婦をふくめた3組の方々は皆さんワインが好きで、特に独身女性の方はソムリエの資格を持った食通です。以前このコラムにて、私が六本木の有名オーナーシェフと言われる店に行ったおり、その店のハウスワインが値段に比して、美味しくないワインを出されたことを話したと思いますが、以来フランスワインは飲まないことにしていました。
それを知ったソムリエの女史が案内してくれたお店が神楽坂にあるビストロでありました。このお店は若いご夫婦で経営されているようで、ご主人がシェフそして奥様がソムリエと言う役割でして、提供するワインの生い立ちや特徴を説明してくれ、値段もきちんと話してくれますので安心して頂く事が出来たので、普段ですと一人当たり1/2フルボトル見当の酒量なのですが、この日は何気なく4本空けておりそれを後で気が付く有様で大変気分良く過ごすことが出来ました。提供されるワインは全てフランスもので、何ゆえにこの安さで美味しいワインを提供出来るのか、大変不思議に感じていましたが、考えてみるとフランスワインは原産地が広く生産者も大変多いと聴いていますから、多分丹念に探す事によって良いものが沢山あるのではないか、フランスには探すに値する素材が多いように思うのです。
私は、今まで不信感の塊でしたから、あまり勉強もしていませんで、単に「シャンベルタン」と云っても料理用ワイン程度のものもあるし、その名に恥じない素晴らしいものもあるので、決してブランド騙しでは無いと言う感覚はありましたが、不信感も単に私の勉強不足でありまして、良い店、良心的な店を探すのがポイントのようであります。
そして、このお店は決して立派な佇まいでは有りませんが、出てくる料理とワインは一流です。価格は決して一流のような価格では有りません。イタリア料理の良い店は私の好みでありますから、知っている店もありますが、フランス料理の店は私にとって大変貴重な体験でありました。

2.岡村喬生の新国際版/マダマ・バタフライの公開練習
7/7(木) 18:30~21:00 イタリア文化会館 アニェッリ・ホールにて行われ聴いてきました。
このアニェッリ・ホールは、九段坂上の靖国神社の向かい側にありまして、収容人員500名ほどの本格的コンサートホールであり、音響効果も素晴らしいものです。
この公開練習は、世界的バス歌手の岡村喬生が提唱するオペラ/マダマ・バタフライの間違い部分を修正し、新国際版として、今年8月にプチチーニ生誕地であるイタリアのトーレ・デルラードにて行われるフェスティバルにて公開されるもので、その公開練習でありました。伴奏はオーケストラではなくピアノでした。また舞台セットも既にイタリアに向けて発送途上と言うこともあってゲネプロと言う訳には行きませんが、それに相当する熱の入った公開練習でありました。
出演者は、蝶々さん/二宮咲子、鈴木/末広貴美子、ごろー/高橋淳、芸者/百々あずさ、進美沙子、宗心裕子、大音絵莉、森裕美子、西谷衣代、福田泰子、大塚啓子、内藤彩加。この人達がイタリアに行って出演します。そして、百々あずささんは蝶々さんのセカンドキャストであります。この他に、現地にて出演するピンカートン役などは、当日限りの援助出演者がありました。
このオペラは、典型的なプリマドンナオペラでありまして、蝶々さん無くして成り立つことは絶対に有りません。その蝶々さんを演じる二宮咲子さんですが、素晴らしい蝶々さん歌手でありまして、以前新国立劇場に蝶々さん役で出演した大村博美さんに驚きましたが、この二宮さんは大村さん以上の歌手ではないでしょうか。日本にもこのようなソプラノ歌手が居たのかと思うぐらいに素晴らしく、日本のオペラ歌手層の厚さに驚くと同時に、私自身が海外の歌手にしか見る目を持たなかった事、その事に付いて音楽評論家の加藤浩子さんにも日本の歌手にも注目するように言われていたにも関らず、このたびは深く反省させられるものでした。
蝶々さんのセカンドキャストが、芸者を演じる百々あずささんで、この方も素晴らしい蝶々さん謳いであります。その他、鈴木、ごろー、などを演じる人達も流石に岡村さんがオーディションを行って、選別されただけに、素晴らしい人達でありました。これで、岡村さんのイタリア公演も間違いなく成功と思うしだいです。

3.バンドネオン奏者 三浦一馬のコンサート
代々木上原の坂之上にありますコンサートホールムジカーザ、美人館長の黒田さんそしてご主人が指揮者の井上道義さんであります。
7/15 PM6:30より、ここムジカーザにてNHK「トップランナー」などに取り上げられ、再放送となるなどで反響を呼んだバンドネオン奏者の 三浦一馬 のコンサートを聞いてきました。
バンドネオン奏者と言えば小松良太が有名ですが、三浦一馬は若干21歳の若さであり、バンドネオンの手ほどきを小松良太に受けたと言うから、やはりバンドネオンを代表する者は小松良太なのかも知れません。しかし、この三浦一馬は小松良太とは趣きが異ります。それは、アルゼンチンタンゴを基本とするものの、私の馴染むアルゼンチンタンゴとは異質のものでありまして、それは時代の違いからくるものでしょう。異質のものと言うのは私の偏見であって、専門家もしくは理解度の高い人からするとそのような表現は間違いなのかも知れません。
アストル・ピアソラも嘗ては、トラディッショナルなオルケスタを率いて演奏していた時代があって、それが進化して現在世界的な巨匠として存在するのですが、グアルディエ・ヴィエハ(古典作品)をあいする(それしか愛せないのかも知れない)私としては理解の外にあるわけです。そして三浦一馬もこのピアソラの路線をひた走っているのです。或いは、別の道かも知れません。私にはよく理解出来ませんが、このバンドネオンと言う楽器に私はある種の郷愁をもっており、奏でる音楽が何であろうとバンドネオンの音が変わる筈は無く、夢中できいてしまうのです。それがあるから、ピアソラの曲も聴いてしまうのかも知れません。
さて当日の演奏です、共演者がギターの大萩康司、コントラバスの黒木岩寿の二人でありました。コントラバスの黒木さんは、元神奈川フィルの主席奏者で現在は東京フィルの主席を勤める日本のゲリーカーと言われる奏者であります。そして、ギターの大萩康司さんですが、私はこの時までこの人について知りませんでした、当日のプログラムによりますと世界各地にての活躍であり、数々の賞をとっている大変なギタリストであります。演奏の基本はクラシックですが、奏する曲はどちらかと言うと民族音楽寄りと思います。その演奏は流石に素晴らしく、三浦一馬とのコンビは絶妙と言うところでしょう。現代音楽に近い演奏でありますが、哀愁に満ちた二人の演奏は何か心に通じ合うものを感じます。そしてメロディーを奏でる傍らベースの役どころを確り担う黒木さんとのコンビは、至福の時でありました。
演奏会が終わって、出演者を交えての立食パーティーが企画されており、その席上私のグワルデイエ・ヴィエハにたいする思いを若いバンドネオン奏者にぶつけたところ、私も好きです、あれはたまりませんねと21歳の若者が受けて立つところなど、苦労人と言うか、芸人というか、我々凡人の接する人種とは大きな違いのようでした。
三浦一馬に付いてですが、日本には何故この特殊な楽器演奏に秀でた者が次々に排出されるのでしょう。そして、アルゼンチンタンゴと言う特殊な音楽のファンが本国のアルゼンチンほどに多いとも言われます。地理的に日本の対極に位置する国である事が何かの縁なのでしょうか、私の周りには狂信的とも言えるアルゼンチンタンゴのファンが沢山おられます。そして、その重鎮の一角を占めておられた大岩祥浩さんが昨年の暮れに亡くならまして、その功績を惇むものでありますが、後を継ぐ方々の裾野は広く、この世界はまだまだ衰えることはないでしょう。

4.目黒のジャズライブハウス/ジェイ・ジェイズの閉店
目黒駅から恵比寿に向かった山手線外側の道路沿いにこのジェイ・ジェイズが開店したのは、2005年の8月ですから丸6年となります。石の上にも3年といいますが、このお店はそれ以上のキャリアを積んでの閉店ですから残念です。
何事もそうですが、良いものに客が付くと言うのも道理でありますが、オーナーの趣味に合わない出演者に客が付き、オーナーの惚れた出演者に客が付かない。と言うとオーナーの趣味が悪いからと思われそうですが、世の中良いものが疎んじまれ、悪いものに人が集まる現象「悪化は良貨を駆逐する」と言う喩えもあり、正しくこの例に沿ったのが、ジェイ・ジェイズの閉店でありましょう。身につまされる思いであります。
このお店のオーナーは、スイング、ビーバップ、モダンジャズ系のトラディショナルなものを好んで、アーティストを選んでいたようです。しかし、集客力となるとどうも実力やオーナーの思いと違う方向になってしまい、自分は何のためにこの店を経営しているのかわからなくなったと云ってました。閉店の理由もこの辺りにあるのでしょう。
私の経営するハイエンド・オーディオ機器でも同じようなことが言えます。世の中、安かろう悪かろうが優先されて当たり前なのですが、性能がよければ価格も高い、性能が悪ければ価格も安いと言うことなのですが、商品のパフォーマンスを評価する能力の無いひとは、価格優先となるでしょうし、その能力を持ち合わせた人は相応の価格を理解するでしょう。この思いが両者の間ですれ違うとお互いに不幸を生むものです。
何事も、供給する側と受ける側のギャップはあるもので、このギャップが無くなった時に事業が成功し、文化が芽生え新しい文化発祥として繁栄すのでしょう。ジェイ・ジェイズの閉店は私にとって残念であり、身につまされる不幸といわざるを得ない事象でありました。

5.MA-1を自宅で聴く
メインアンプMA-1は、昨年の新商品、ステレオサウンド・グランプリを獲得したフェーズメーションの商品であります。開発に、概ね3年掛かっており、当社にとっての大作で有ります。開発途上では、何度も拙宅に持ち込み音質性能の確認作業をしていますが、商品の発売後は現品が不足ぎみで、拙宅での試聴も思うようにいかなかったものです。
本機の特徴は、大型直熱3極管の845を300Bでドライブし、無帰還回路のシングルアンプです。シングルアンプは、プッシュプルに比較して音の鮮度純度が格段に優れています。しかし、重低音域ではプッシュプルに比べて劣るところがあります。本機では、この低音域部の弱点を解決すべく、出力段とドライブ段に夫々別々に電源を設ける事により解決を図っています。従って、完成したアンプはスペックからは想像出来ないくらいにコストがかかり、重量も重いものになってしまいました。しかし、シングルアンプとは思えない低域ドライブ力を有し、最新の大型スピーカーを理想的にドライブし、有名スピーカーが浪々と鳴っている事に、多くの方々から好評を貰っています。
さて、拙宅のシステムですが、マッキントッシュのXRT-22スピーカーを300Bシングル無帰還回路のアンプで駆動しています。今回、この300BシングルアンプをMA-1に置き換えてみました。このMA-1は、従来器の300Bシングルアンプの4倍もの物量を投入した贅沢なアンプですから、その効果たるや、素晴らしい音となって現れるであろうと想像していました。その想像に違わず、低音の素晴らしさはスピーカーが変わったのでは無いかと思わせる変身であり、音域全体が美しい湿り気化のある音に昇華されており、これは自社のものとはいえ購入して手元に置くべきと思い、即購入の手続きをした次第であります。
このアンプに使用した真空管300Bは1988年製のATT社製であり、845は米国セトロン社製のものが搭載されています。
今更説明の必要も無いと思いますが、1988製と言うのは、ATT社(この時期WE社はATT社に吸収合併されていた)の純正設備による最後の製造ロットでありまして、その新品は現在では大変貴重なものであります。その後に製造されて販売されたWE-300Bは、ウエストレックスと言うウエスタンエレクトリックの商標を引き継いだ会社が製造したレプリカでありまして、音質などは可なり異なるものであります。現在では、そのレプリカも製造中止となり、WEのブランドが付いた300Bの発売は在庫品以外には無い情況で有ります。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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