Phasemation フェーズメーション

colums会長のコラム

会長のコラム 072

・プリアンプの考察

今月は、オペラの鑑賞は有りませんでした、コンサートも神奈川フィルの定期演奏会以外に本格的なコンサートも有りませんでしたのでコンサートレポートを休む事にします。
私の良く行くレストラン「ボンテ」に於いて、元神奈川フィルの主席コントラバス奏者の黒木岩寿さんの演奏を交えたベートーベンをテーマにしたレクチャーと食事会、そして代々木上原のムジカーザでの、やはり黒木岩寿さんの企画による大人の世界を演出した素晴らしい音楽会に参加した事が、主な出来事でありました。
このムジカーザと言うのは、代々木上原駅から徒歩1分程度の便利な場所にあり、100人程度で満席になるこじんまりした響きの良いホールです。何と言っても床が木製で、舞台と聴衆が同じ床レベルに位置しますので、楽器の響きが床を通じて聴衆の体に伝わり、そして部屋の空気を揺るがすと言う理想的な構造です。当日の演奏メンバーは、コントラバスの黒木岩寿がリーダーで、チェロが東京フィルの主席を勤める金木博幸、ピアノが鳥羽亜矢子と言う構成で、休憩込みの約2時間の演奏の後、演奏者を含めて立食パーティーが催され、大人の優雅な時間を過ごすことが出来ました。

今月は、久し振りに技術の話をします。オーディオコンポーネントを組み立てるとき、プレーヤー、プリアンプ、メインアンプ、そしてスピーカーの順で接続し組み立てますが、この場合プリアンプの存在が、マニアの間でしばしば話題になります。
メインアンプの入力に音量調節機を付けるとそれでプリアンプは不要になりますし、また、プレーヤーの出力の後にATTを入れてプリアンプを省く事も出来ます。この事からプリアンプ不要論が出てくるのですが、そもそも、「何ゆえにプリアンプが存在するのか」と言う事に付いて少し考察してみたいと思います。
音量調節用のVRコントロールにしてもATTにしても音量を絞ると言う事は、下図の抵抗値のA対Bの比によって決るポテンショメーターの理屈によるもので、抵抗AとBが同じ値であれば音量は入力に対して1/2つまり6dB絞ったことになります。電圧的には、入力の電圧が1/2になって出力されると言う事で、音量調節の機能を果たすわけですが、この音量調節器を通過する事によって、電圧のみならず電流も1/2になると言う事で、結果的に電力(音響エネルギー)は1/4になりここに音量調整の意味があるのですが、
この抵抗分圧による音量調節方法ではこれら抵抗による電力損失があり音質低下と言うオーディオ機器に致命的な欠陥を生みだすのです。
電力が失われると言うことは、鍋料理の美味しいスープのエキスを飲んでしまうとかで、失われる事に相当すると考えて下さい、その失われた電力をアンプによって補うのがプリアンプの役目と考えられます。

ポテンショ式音量調節器の図

しかし、失われたスープのエキスは、プリアンプの機能によって完全に取り戻せるのでしょうか、誰しも考える疑問であります。それは、薄まったスープをお湯で増量するようなもので、完全に取り戻す事は出来ないと言うのが私の答えです。それを如何に限りなく元に戻すかと言う努力が各社のノーハウであり技術と言って良いでしょう。
では何故スープのエキスが失われるかを考えてみましょう、これはオームの法則によってボリュームコントロールを経由する事で失われた電力は熱と成って損失し、それによって出力インピーダンスが変わってしまうからです。この失われた電力を取り戻すために増幅用のアンプを挿入しプリアンプの出力とします。
此処で言う増幅用アンプは、お湯でスープを薄めるお湯の役目なのですが、しかし、此処でスープの味を取り戻すべくだし汁を追加したとすれば如何でしょう、増幅用アンプに味付けの機能を加えると言う事です、オーディオを試みる皆様にはもうお分かりですよね、ここにプリアンプ無用論と有用論が出てくる所以なのです。
美味しいスープをそのままメインアンプに送り込むことは出来ないのか。それは、ポテンショ式VRの様なものではオームの法則が存在する限り不可能なのです。しかし、オームの法則が及ばない所で回路を検討すれば良いわけで、我々が考えたのはハイブリッド方式と言うものですが、この場でその原理を明かすことは出来ません。しかし、フェーズテックのプリアンプ「CA-1」「CA-3」にはこの原理を応用した音量調節が搭載されており、専門雑誌でも高い評価を得ております。また、横浜市の新事業促進に貢献するとの事で補助金の対象にも選ばれています。
ボリュームコントロールは、電圧を下げて音量を下げる機能ですが、この時、電圧のみならず電力が失われます事ご理解頂けましたでしょうか。だから、ボリュームを絞ると音量が絞られると同時に音が痩せてしまうのです。ですから、ボリュームコントロールの機能は、オーディオメーカーの腕の見せ所で各社各様に検討されております。単にポテンショ式VRによって音量調節を賄っているメーカー製品は沢山ありますが、それはその程度のものとお考えになれば良いとで、この音量調節の原理を知ってオーディオ機器の購入に当たることは、ご自分の求める音質と資金のバランスを考える上で、極めて重要な事項であると心得て貰いたいです。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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