Phasemation フェーズメーション

colums会長のコラム

会長のコラム 069

・低音再生は難しい
・新国立劇場のオペラ「ドン・ジョバンニ」
・今年も「第九」を聞く

大手町の銀行街に三井住友大手町支店と言う立派な建物があります。ここは元、住友銀行の本店だったところで、古きよき時代の建物と言う感じのもので、特に一階ロビーの高い天井と大理石の内装はヨーロッパの宮殿を思わせるものがあります。此処で室内音楽を演奏すると良いのでは無いかと誰しも思う素晴らしい室内環境でありまして、なんとそう思うコンサートが実現したのです。
銀行と言う硬いご商売が、このロビーを開放してコンサートが開催されたということは大変喜ばしい事です。演奏者はN協メンバーの選りすぐり、第一バイオリンがコンサートマスターの篠崎史紀、第二バイオリンが白井篤、ヴィオラが小野富士、チェロがN協主席の木越洋、コントラバスが西山真二の全てN協メンバーの5人編成で、このメンバーを知ったら何を置いても行かない訳には行きません。このコンサートが、想像通りの素晴らしい音響効果に加えて、N協メンバーの素晴らしい演奏、そして、篠崎さんのトークは至福の時であった事は言うまでも有りません。
この様な小編成のコンサートは聴衆と演奏者が同じ床レベルで演奏される事が肝心で、当日のコンサートは、この中世ヨーロッパの王侯貴族の贅沢な条件を満たすものでありまして、昨今ではなかなか実現出来ない贅沢なものでした。
当日は、生演奏を堪能しつつもオーディオ業の悪い癖で、バイオリンの高音、コントラバスの低音などと、音楽を聴くよりも「音」を聴いている自分を発見し、それはそれで楽しいのですが、後で家内と音楽談議のときに話しが合わずに、何を聞いていたのかと詰寄られる結果に成ります。
当日のコンサートでの音は、まず低音が素晴らしいことに改めて感銘しました、此処での低音は、オーディオ機器では中々出ません。バイオリンの高音に付いては、技術の進歩によって良いスピーカーが手に入る様になりましたが、低音はそう簡単には行きませんで、響きの良いホールでの生のコントラバスの豊かな低音は、現在の技術を以ってしても、残念ですが高音ほどに良く再生すことが出来ません。それでも、過去の私の経験でこれに近い低音が再生され聞かせて頂いたのは、池田圭さんのスタジオ、最近では菅野沖彦さんのリスニングルーム、そして高橋和正さんのMBFスピーカーぐらいですが、それもこのライブに比較的近いと言うものであります。
クラシック音楽の演奏では、これだけ、大きな空間で5人の演奏家がこれだけ豊かな音楽を聞かせるのに、ジャズのライブハウスは何故PAを使うのか、理解出来ません。先日も20数人で満席になるライブハウスで、バンドネオンとピアノのデュオを聴きましたが、バンドネオンにマイクが固定されPAが使われていました、たまりかねて、PAを止めてくれと注文してしまいました。すると、バンドネオンの音量がピアノに負けるので仕方無いといいます。私もそれ以上は言いませんでしたが、その後は、PAのデジタルエコーを切って、音量を少し下げた様で可也すっきりした音になりましたが、日本の聴取はPAに頓着無いところがあり、本当に音楽を理解しているのだろうかと思ってしまいます、綾戸智恵の舞台なども、うるさいほどのPAですから歌が上手いのかどうかも怪しいものだと思われても仕方ないでしょう。
バンドネオンに付いて言うなら、アルゼンチンのライブハウスでも観光客を相手にした場所はこれと大差有りませんが、現地の人達に人気のある店はPAなど使いません。

今月の新国立劇場です、モーツアルトのオペラ「ドン・ジョバンニ」でした。劇場の装飾がスッカリとクリスマス調となり、色彩に乏しい我がオフィスからここに来ると、何か華やいだ雰囲気に包まれ、これから始まるオペラの開演がとても楽しみになってくるから不思議です。この非日常の環境が我々ビジネスマンにとって凄く大切な事との思いを改めて感じるものでした。
何時ものことですが、新国立劇場に限らずウイークデーのオペラ開演は、だいたい、午後6.30か7.00からです。困るのが食事で、開演前にヘビーなディナーにワインなどを済ませようものなら、序曲の始まりと同時に寝てしまいます。オペラの終演は、大体10.00頃でオペラの観客を相手にしたレストランがこの近辺にありますが、私は車ですからワインを飲む訳には行きません、家に返って食事と言う事になります。しかし、このパターンも体にとってベストでは有りませんで、今、私が困っている最大テーマであります。
さて、オペラ「ドン・ジョバナニ」についてです。オーケストラが定番の東京フィルハーモニー、指揮がコンスタンテイン・トリンクス、この人は新国立劇場には始めての人です、経歴をみるとドイツの中堅どころの実力者のようです。ドン・ジョバンニ(バリトン)役がイタリア人のルチオ・ガッロ、でメトロホリタンやミラノスカラ座に出ている実力者で、何と言ってもこの役がキーである事はこのオペラの成否に関わります、そしてアンナ・ドンナ(ソプラノ)がエレーナ・モシュク、新国立劇場には過去椿姫に出演しています、そしてツエルリーナ(ソプラノ)に、今、活躍中の高橋薫子が出ていて、役柄を良くこなしていましたし、ベストな配役選定であったと思います。
演出は、極めてオーソドックスで好感のもてるものでありました、主役の役どころは全て白人に抑えられていますので、日本のプロの方々には不満も多いと思いますが、オペラを楽しむと言う事からすると、白人でないと「サマ」にならないし、個人的には貴重な時間を割いて出向く気にはならないでしょう。
当日は、比較的長い公演プログラムでしたが、オペラは「こうこありたい」と思う公演でありましたし、素晴らしい機会に恵まれて幸せを感じるひと時でありました。

今年も、神奈川フィルのベートーベン「第九」を聞きました。昨年と同じで、演奏が神奈川フィルハーモニー、指揮が現田茂夫でした。会場がやはり昨年同様に神奈川県民ホールで、昨年と何か変わったことが有ったかと聴かれれば、私には何も感じる事は有りませんが、ただ、大太鼓の位置が変わっていました、昨年より響きが良いのかと期待しましたが、昨年より悪かったのではないでしょうか。このところ、定期演奏会が「みなとみらいホール」に定着した為か、今年の「第九」は県民ホールの響きがより気になって仕方ありませんでした、損な聴き方は承知しています。
ただ、会場は略満席で、暮れの「第九」は日本だけの現象との事ですが、音楽を楽しむ人口が増えて貢献度大です。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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