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colums会長のコラム

会長のコラム 108

私が、オーディオ事業に付いて考えている事ですが、この事業はお客様にアメニティーを売る商売であり、夢を売るに等しい商売をしていると考えるのです。そう言う私も夢とは別の現実世界で苦闘しているその一方で、音楽やオーディオを通して夢と希望に通じる心の糧として、アメニティーをお届けしたいと思いつつこのコラムを書いてもいます。
この矛盾するギャップを克服しつつ努力していますが、それでも文章力や拙い人生経験では隠しきれない何かを表してしまい、読んでも面白くない、間違っていると云った苦情を耳にします。これからも、お気付きのご意見や反論など有りましたらお寄せ頂けますと一層の励みとなりますので宜しくお願い致します。
さて、当社はいち早く高音質を目指したUSBオーディオ商品を開発し、市場に発信しました。その結果、マニアの方々や評論家の方々から高いご評価を頂きましたが、私自身はデジタル技術に疎く、商品の開発は若い意欲的な社員の発案で始めたものでありました。
パソコンを筆頭に、デジタル機器は進歩が激しく我々ユーザーからみると大変ありがたい事なのですが、その卓越した機能から発想するビジネスモデルは、その機能に伴って限りなく新しい方向へ進化して行き、結果としてビジネスに関る者にとって熾烈な競争の原点となります。パソコンを含むデジタル機器を商売として扱うとハイテク商品が恰も生鮮食料品のような商品と化し、中小企業の出る幕は限られたものになってしまいます。
それが事オーディオとなると、我々にとって穏やかでは有りません。今までデジタルオーディオと云えばCDを指していましたが、今ではUSB-DAC、LAN-オーディオなどを言う様になっています。この今で言う、デジタルオーディオは、録音スタジオで用いているリニアーPCMのデーターを如何にコンシューマー利用に耐えるかと言う観点、そしてプロの世界で言うところのアーカイブに抜群のメリットがある事に開発の原点がありました。そしてこれは、日本の住宅事情にも合うし、将来、体の自由が利かなくなった時の事などを考えると、その恩恵は計り知れないものがあるからでありました。
また、我々ハイエンドオーディを目指すものにとって、デジタルオーディオの良さを求めて、アナログオーディオのファンを取り込む事にもあった訳です。しかし、今の情況は如何でしょう、デジタル機器の特徴を生かして安物が横行し、数万円のものから数百万円のものまで出回る状態で、我々の目指すオーディオとは別世界を展開するようになり、生鮮食料品以上の販売流通情況と化しています。
これが、パソコンを伴った「オーディオごっこ」として収まってくれれば良いのですが、機器を販売する業者は「数百万円の機器と同じ機能です」と言う、確かに同じ機能ですからオーディオなるものを益々奇怪なものにしてしまう、そうなると大企業も対抗上その路線に入ってゆきますから始末が悪いのです。
CDが成熟したころ、CDがパッケージメディアを駄目にしたといわれました、それにより、ソフト業界の再編が進み、中小スタジオから良いものが出るようになりましたが、それは関係者の熱意と根性の賜物であり、技術的観点から見るに、これから益々の発展が期待されるのですが、いまでは長く続く事を願うのみであります。そして、今デジタルオーディオがオーディオ業界を駄目にし兼ねない、雑貨の域に入ろうとしています。果たして、ソフトの業界と同じ軌道を辿るのか、その道のりは予測困難であります。

11月のサマリー
1.サンクト・ペテルブルグ・フィルハーモニーのコンサート
2.高輪会オペラの会
3.新国立劇場 オペラ「ルサルカ」

1.サンクト・ペテルブルグ・フィルハーモニーのコンサート
 11月6日土曜日横浜みなとみらいホールにて開催された2時開演のマチネコンサートに行ってきました。このオーケストラは、1938年にムラビンスキーが音楽監督に就任して50年間その座に留まり、その厳しい統率の下に一糸乱れぬ演奏が、ムラビンスキーとレニングラード・フィルの名をもって全世界に轟き渡ったものです。私にはチャイコフスキーの交響曲4番、5番、6番、が青春時代の衝撃的な印象が今も忘れがたい記憶に残るものであります。
そのオーケストラも現在では、ユーリー・テミルカーノフが芸術監督・主席指揮者を務めるサンクト・ペテルブルグ・フィルハーモニー交響楽団となって、この度の日本公演となっています。今回の横浜みなとみらいホールでの演奏会は、ラフマニノフ/ピアノ協奏曲2番、とチャイコフスキー/交響曲第5番、でした。
オーケストラの楽器配置は、当楽団の伝統的な配置でありまして第一バイオリンが指揮者の左サイド、隣がチェロでその後ろがコントラバス、そしてチェロの隣がビオラ、オーケストラ右サイドが第二バイオリンと言う弦楽器配置であり、ムラビンスキー時代のレニグラード・フィルの写真と同じであります。そして、コントラバスは9本、第一バイオリンが20本と言う大掛かりな編成も、昔の写真と見比べて同じようでありました。
さて、演奏ですが、何か昔の音をトレースしているような気がしてなりません、そして嘗てレコードで聴くムラビンスキーの一糸乱れぬ演奏も、最近では名門どころのオーケストラでは当たり前と言って良いでしょう、特にズビンメータが率いるイスラエル・フィルなどはこの点では優れた存在であります。観客の中には、熱狂的な拍手と声援を送る人が居りましたが、私には新たな感動は無く鳥肌も立ちませんでした。
佐渡裕の指揮するベルリン・ドイツ交響楽団のチャイコフスキー/交響曲5番のCDを最近良く聴きますが、やはり名門の商売臭よりも情熱が心を揺さぶるのです、オーケストラの魅力とはその感動ではないでしょうか、このコンサート、カネと時間を有効に使うべしと反省しきりでありました。

2.高輪オペラの会
 11月20日恒例の高輪オペラの会がグランド・プリンスホテル新高輪で行われ、モーツアルト/オペラ「フィガロの結婚」を鑑賞して来ました。
午後12時からホテル内のイタリアレストランにてワインとイタリア料理の昼食を頂き、デザートにコーヒーを頂いて一服するのが恒例であります。そして、1時半ごろからコンサート形式によるオペラが演奏されます。
ピアノ伴奏がお馴染みの河原忠之さんです、今回のモーツアルト演奏では、この人の音楽解釈の素晴らしさに改めて感じさせられるもので、この演奏には見慣れたフィガロが改めてこのような物だったと感じてしまうものでした。レストランと言う限られたスペースに僅か百数十名程度の観客を対象にした演奏であり、しかも一回限りの演奏会ですから本当に勿体無いと言うものでありました。
出演者は、フィガロ/星野 淳、スザンナ/宮本彩音、伯爵夫人/佐藤彰子、と言う布陣で有りまして、それぞれがプロの仕上がりと言うものでした。特にケルビーノ役の大野康子さんは歌唱レストラン「銀座ライオン」で歌っているところをスカウトされたとの事ですが、これが中々なものでありました。

3.新国立劇場 ドボルザーク/オペラ「ルサルカ」
11月23日午後2時開演のマチネ公演で、新国立劇場ドボルザーク/オペラ「ルサルカ」に行ってきました。当日は家内と行く予定でしたが家内の体調不良のために、近くにお住まいの評論家高橋和正さんを誘って行ってきました。
ドボルザークがメロディーメーカーである事は有名でありますし、このオペラにも有名なアリアがあります。しかし、何故か公演機会の少ないオペラで、観劇への期待も大きなものでありました。
物語は、水の精ルサルカが水浴に来る王子に恋をし、魔法使いに頼んで自分も人間の姿にしてもらう、事から物語が始まります。そこには、魔法使いの条件がある訳で悲劇や幸せの物語が展開して行くと言う、メルヘンの世界であります。演出も舞台もこのメルヘンの世界を良く表現し力の篭もった公演でした。
演奏が、東京フィルで指揮のヤロスラフ・キズリンクの音楽の持つ叙情的な美感をそのタクトに的確に反応していました。この指揮者はチェコ出身でスロバキア国立歌劇場の主席指揮者を務める人で、音楽的ポテンシャルは並みのものでは無いと思います。云ってみれば、新国立劇場のポテンシャルは世界レベルで見ても決して劣るものでは有りません。
そして、当日の歌手陣でありますがルサルカ役のソプラノ/グリヤコバにしても、日本のトップレベルの人気ソプラノ歌手に、これだけの実力を持った人は居ないでしょう。
我々オペラファンにとって、新国立劇場万歳であります、今シーズンこれからも興味深い公演が目白おしであります、今でもチケットの購入は可能のようですし、費用的に心配であればガレリア席もあります。是非お出向きになることをお勧めします。

鈴木信行 :すずき のぶゆき

昭和45年勤務先のアイワ株式会社をスピンアウトして独立。

磁気記録に関る計測機器の製造販売の事業を開始し、その後カーエレクトロニクスの受託設計の事業を始める。

何れの事業も順調に発展したが、会長の永年の思いであった、ハイエンドオーディオの自社ブランドを立ち上げ、現在はカーエレクトロニクスの事業を主とし、協同電子エンジニアリング(株)として運営している。

現在、協同電子エンジニアリング(株)の取締役会長として、趣味のオーディオを健全に発展させたいと真摯に研究し、開発に勤めている。

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